未来を生きる子どもたちに〜6年生での教科等横断的視点に立った指導を通して〜
勝 矢 真 一 郎

 新学習指導要領では,教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を目指すことが挙げられている。各教科のねらいや特性をふまえつつ、教育課程を見直し、言語能力や情報能力など生涯にわたって学びの基盤となりうる資質・能力を、各教科を通じて横断的に育成していく必要性が求められている。これを進めるにあたって必要なことは、「キーワード」で各教科を結び付けることである。担任している6年生の子どもたちに、付けたい資質・能力を考え、各教科や単元の特性と絡めたときに「生き方」「未来」というキーワードが浮かび上がってきた。思春期を迎え、何かと思い悩んだり、得意なこと・苦手なことなど、自身の特性を良くも悪くも自覚したりする今、「自分は未来に向かってどのように生きていきたいのか?」という根源的な問いを追い求めていくことが子どもたちに必要であり、教科の枠にとらわれない大きな問いをもつことが、各教科の学習の意義や関連性を、より強固なものにできると考えた。2学期では以下の実践を行った。

【国語科】
@よりよい未来にするために(光村)
 「人権」や「環境」など問題意識を感じたテーマについて、意見文を書く。
Aやまなし、イーハトーブの夢、雨ニモマケズ、宮沢賢治作品
 作品を通して宮沢賢治という一人の人間の生き方、考え方に迫る。人権集会で「雨ニモマケズ」の群読を行う。
【社会科】
@天保一揆はなぜ起こったのか(地域教材)
 幕府の不正な検地に立ち上がった百姓たちの行動原理と時代背景を考える。
A部落差別問題学習
 厳しい差別、渋染一揆や水平社宣言などの歴史的事実から、年間を通して、「人間としての尊厳」「人としての生き方」について考える。
【総合】
○昔とつながろう
 戦時中のくらしや原子爆弾、赤十字の取り組みなどについて調べ、今の私たちにできることを考える。
【体育科】
○組体操 伴東維新 〜未来をその手で切り拓け!!〜
 テーマに「維新」「未来」を入れることで、身体的表現、仲間との協力などによって、未来や時代を切り開いていく様子を表現する。

 このように、各教科に絶えず「キーワード」を意識的に入れ込むことで、学習者である子どもたちが、必要な資質・能力について「自覚」し、「どう生きるのか?」という問いに向かって学びを深めることができるようになってきた。3学期の国語科では、読むこと領域では「海のいのち」や「生きる」、話すこと聞くこと領域では「今、私は、ぼくは」、書くこと領域では「忘れられない言葉」など、まさに「生き方」「未来」について思いを巡らす、集大成ともいえる教材が控えている。そして、卒業式の日にはこう問いたい。「君たちはどう生きていきたい?」と。指導者である私自身も、「子どもたちの未来のために生きる」という生き方をぶれずに全うしていきたい。
(甲賀市立伴谷東小)