教材研究
西 條 陽 之

 10月のさざなみ定例会では、京都女子大学にて行われた「夏期講座」で取り上げられた詩について、自分ならばどういった授業をつくっていくかについて研究会が行われた。
 詩は石垣りんの「空をかついで」であった。

  空をかついで  石垣 りん
 肩は
 首のつけ根から
 なだらかにのびて。
 肩は
 地平線のように
 つながって。
 人はみんなで
 空をかついで
 きのうからきょうへと。
 子どもよ
 お前のその肩に
 おとなたちは
 きょうからあしたを移しかえる。
 この重たさを
 この輝きと暗やみを
 あまりに小さい その肩に。
 少しずつ
 少しずつ。  (詩集『略歴』1979年刊)

 まずは全員で詩の聴写を行い、文字に起こしていく。漢字なのかひらがななのか、行を空けるかなど、細かい情報も伝えられる。
 次に、詩についての読みを先生方に伝える。一番の若手ということで、私が進行役に任命され、冷や汗をかいた。詩についての思い、授業の展開について、自分の構想を伝える。考えをまとめるには、詩を繰り返し読み、言いたいことを整理しなければならない。そこには、主体的な読みの必然性が生まれる。
 その後、先生方との問答を通して、言葉一つ一つを吟味していく。言葉のイメージやニュアンスについて解釈を共有する。さらに話を全体に投げかけて考察や考え方を挙げていく。そうした繰り返しが何度となく行われた。「地平線」は遠くから眺めているから線に見えるが、拡大してみれば高さや形も多様である。そこから、人それぞれの違いとつながりを現しているのではなきか。そもそも、水平線との違いはなんなのか。理科教育的見地から見ると、など様々な観点からアプローチが行われていく。豊かな解釈や授業展開の可能性をたくさん示唆していただいた。以下「空をかついで」授業展開案。

(1) 題名からどんな詩かを想像する。
  想像しにくい、わかりにくいことを実感させる。
(2) ノートに聴写する。
  言葉一つ一つに着目して書くようにする。
(3) 音読する。
  読めていることの確認をするため、連れ読みや交互読みで3回は音読する。
(4) 空とは何か考える。
  単に空のイメージを連想するのではなく、詩の中の言葉から導き出す、言いかえる。三連から読み取る。
(5) 肩のイメージを受けて空について再考する。
  一、二連に「少しずつ 少しずつ」の意味を考える。
(6) 学んだことを想像しながら音読する

【指導のポイント】
 ○子どもの「発見」を促すための手がかりを見つけ、散りばめておく。
 ○ただ単に「どんなイメージ」か発問するのではなく、次の出口に向かうための狙いを押さえる。
 ○一つでも発言できたという機会を設ける。
 ○思考が「深まった」を実感できるしかけを用意する。
 ○思考を促す言葉、呼びかけを用意する。

 大先輩を前にして、自分の考えを伝えることは緊張の連続であった。しかし、一方的に教えていただくことが、今回の目的ではなかった。自ら問題提起をして、考えをつなぎ、拡散し、自分の中で咀嚼して練り上げていく。教師の教材解釈が授業改善の要であると学んだ。そして、教師自らが主体的、対話的な話し合いから学びを深めることで、授業の構想にも活かすことができるのだと実感した。
(大津市立小野小)