ノート指導を考える
森 邦 博
1 ノート指導の「なぜ」 ノート指導を通じて小・中9年間において「何を」育てようとするのか、ノートの良さ・役割を整理しておきたい。 新しい学習指導要領国語編、第1章総説の2「国語科の改訂の趣旨及び要点」には、中央教育審議会において示された小・中学校の国語科の成果と課題が「全国学力学習状況調査結果」を基に述べられている。即ち、 小学校の課題(傍線筆者) ・文における主語を捉えること ・文の構成を理解すること ・表現の工夫を捉えること ・目的に応じて文章を要約すること ・複数の情報を関連付けて理解を深めること 中学校の課題(傍線筆者) ・文章を読んで根拠の明確さや論理の展開、表現の仕方について評価すること ・伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確にして書いたり話したりすること ・複数の資料から適切な情報を得てそれらを比較したり関連付けたりすること である。 これらの課題はノート指導のよさ・役割を生かした指導によって解決ができると考える。 意見や感想を話し合うことは授業の中心になる大切な言語活動である。が、話し言葉は瞬時に消え、「記憶」は時間とともに薄れる。話し合いの様子や板書を画像にして残し再生するという手立てもあるが、ノートに書いた「記録」は一人一人に確実に残る。 「文章を要約」し、「伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確」にして書き、引用したノートを基にした話し合いは、より深く考え、確かな表現力を伸ばす学習活動になる。話し合いでの良い意見や大事な言葉を書き加え書き直して成果をノートに残す学習は、「読んで根拠の明確さや論理の展開、表現の仕方について評価する」学習活動を促す。また「情報を関連付けて理解を深め」、「情報を得てそれらを比較したり関連付けたり」する学習態度を育成し、課題に応える授業につながるからである。 2 ノート指導の「どのように」 指導と評価は一体と言われる。 ノート指導で自ら考え、判断し、表現する国語力を「どのように」つけるかの観点を明らかにしておきたい。まずは評価の観点をシンプルにして徹底することを第一歩としたい。 ア、基本的な技能面=4つの基本的な約束<@日付、A単元(教材名)、Bめあて、C振り返り>ができている イ、表記面=正しい文字で書いており(メモなどは自分で読める程度でよい)、乱暴な文字で書いていない(上手、下手ではない) ウ、学習活動の面=目標、計画、学習過程、振り返りの書き方・内容から子どもの工夫を見つける。 実態に即して到達点をおき、段階的に指導・評価を積み重ねていくことが大切になる。それは学級だけでなく学年・学校で共有すると確かになるだろう。そうしてこそ、学校の実態を踏まえた計画的で、継続的、系統的な学校教育の実践力を発揮することができるはずである。 評価は子どものやる気や自信を育てることが主眼であるから、特に「ウ」の項目の評価では、工夫や努力を認め、励まし、方向付けるためにするようにしたい。自信とヤル気に火がつくと子どもは色々工夫をするようになる。それを学級全体にも広げていくのは、指導の醍醐味でもあるだろう。 地道な指導実践と評価の積み上げに努めたいものである。 (京都女子大学非常勤講師)
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