心に残る言葉
岡 嶋 大 輔

 子ども達が卒業を間近に控えたこの時期に、各々が「心に残る言葉」を発表しようと取り組んだ。
 「心に残る言葉」について、これまでに出合った言葉の中にあればそれを、なければ、本やインターネットで調べて「これは」と思うものを取り挙げるようにした。そして、それがどういう場面で語られた言葉なのか、どういった意味なのか、その言葉に対する自分の思いは、等と考えて書くようにした。
 本は、名言集といったものや、その偉人が語った言葉も書かれている伝記を用意した。その言葉を語った人物の生き方や、そう語った背景が詳しく書かれている点がいい。インターネットは、情報量が多く、圧倒されるぐらいである。それらをじっくり読みながら、自分の心に響く言葉を選ぶ子も多かった。一方、すでに「座右の銘」といえる言葉を持っている子も少なくなく、嬉しい驚きでもあった。

 A子は、誰かが困っていたら、その人を何とかして助けようとすることが多い子である。先日も、クラスイベント係の子が鬼ごっこの鬼になる子をうまく決められなかった時に、周りの友達に声を掛けて鬼を集めた。運動会の応援団長や、音楽会の指揮者などに立候補することも多い。そんなA子は、次のように書いた。
「『ごまかして成功するよりも、堂々と失敗する方がよい。〜ソフォクレス〜(ギリシアの劇作家)』 私はバレーボールをがんばっています。ある試合の時に、失敗が恐くなって、練習のように思うようにプレーができなくなった時がありました。そんな時に、この言葉を思い出して、これまで練習してきたことを信じて、思い切ってプレーすることができました。練習している時は、練習でいい加減にやっていたら、その後で試合に勝ったとしてもあまり嬉しくないと思ってがんばっています。」
 A子のような子は、周りから、「よくできる子だから、できて当たり前」と見られがちかもしれない。しかし、そうではなく、周りの人のことを大切に思い、自分自身も葛藤しながら「言葉」を支えにして成長を続けているのだということが、この文章から強く伝わってきた。

 学習の後半では、一人ひとりが前に出てスピーチをした。聞き手は心に残ったことをメモに取って残すようにした。友だちが発表した言葉が、新たに「心に残る言葉」になることも多い。「B男が発表した『練習は本番のように。本番は練習のように』という言葉が、卒業式の練習に当てはまり、だから今、練習を精一杯がんばっている。」といったことを日記の中に書いた子もいた。
 その後、みんなが書いた「心に残る言葉」は、小冊子にまとめて配付した。
 卒業してからも「心に残る言葉」に出合い、そういった「言葉」に支えられ、よりよく生きていってほしいと願っている。
(野洲市立野洲小)