物語のここがおもしろい! 〜作品の特色をとらえて読み味わおう〜
谷 口 映 介

 「わらぐつの中の神様」(光村図書5年)を学習材に実践している。今回は、子どもの主体性を引き出す導入の工夫と、必然性のある交流を重点に学習を仕組んだ。

(1)主体性を引き出す導入
 導入では、子ども自らが読みの観点や目的を見出す過程を大切にしている。今までに学習した物語文を振り返りながら、「物語味わい方ポイント」を整理していった。最初は、今までの読みを思い出しながら、次は、教材の初発の感想を交流しながら付け足していった。
◎登場人物の描かれ方
・人物の性格(人物像)を読む。
・人物の言葉や行動から、ものの見方・考え方を読み取る。
※心に残るキーワードを探す。
・中心人物の心が変わったところ(心情の変化)を読む。
・人物と人物の関係を探る。
◎物語の構成の工夫
・物語の構成・展開の工夫を読む。
・しかけ
※どうして、こんな構成にしたのか?引きつけられるわけ
・作品のテーマ(伝えたかったもの。題名が表しているもの)
◎使われている言葉や表現
・情景が分かる言葉 ・色 ・比ゆ(たとえ)の表現 ・方言の効果。よさ。 ・擬音語や擬態語
 子ども達は、3つの観点(◎)から一つを選択し、一人学習で自分の読みをまとめていった。



(2)必然性のある交流に向けて
 読むにあたって、上にある「物語おもしろさレーダー」で自分の関心を視覚化した。その上で、観点を選択して学習していく。交流では、自分の読み―つまり、自分が感じた物語のおもしろさを伝え合うことが目的になるのだが、このレーダーが有効に働いた。交流となると、単なる意見の羅列に陥りがちであるが、「相手のレーダーや自分のレーダーを広げよう」とすると、聴き合うことへの必然性が生まれる。その際のグループ編成に関しても、
 @同じ観点の友だちと作戦会議
 A違う観点で学んだ友だちとおもしろさを伝え合う。(アピール+新たなおもしろさの発見)
の二段階の交流を仕組むことで、自分の考えを広げたり、深めたりすることへとつながった。学習の振り返りでは、「誰の」「どんな意見や考えで」「(自分の読みが)どの様に変わったのか」を具体的に記述することで、一時間の学びの自覚へとつながるようにした。「交流によってレーダーが広がり、うれしい」とする感想が多く、満足度の高い学習となった。
(滋賀大学教育学部附属小)