子どもの主体性を引き出す学習過程の工夫とは何か
谷 口 映 介

 「大造じいさんとガン」(光村図書五年)での実践である。本実践で重視したことは、「子どもを主語にした(子どもの主体性を引き出す)」学習過程の工夫である。以下、そのポイントを紹介したい。

(1) 子どもが学びを振り返る
 物語の魅力とは何であろうか。学びは、子ども自身が読みの観点を導き出すことから始まる。まずは、既習教材を振り返り、物語の何に強く心を引きつけられたのかを出し合った。
C:四年生で学習した「ごんぎつね」では、ごんのつぐないが心に残っています。最初は、いたずらばかりだったごんが変わって行くところと悲しい結末が忘れられません。
C:二年生の「スイミー」は、「虹色のぜりーみたいなくらげ」などの比喩が魅力だなと思います。様子が思い浮かべられてきれいだなと思っていました。・・・
 既習教材の魅力を語る中で、子ども達と共に観点を整理していくと、次の様になった。
☆人物の言葉や行動
☆心情の変化
☆文章表現・・・情景・色・比喩・心情を表す表現など

(2) 子どもが学習計画を立て、一人で学ぶ時間を保障する。
 読みの観点を基に、子どもがじっくりと物語の魅力を追究する時間を保障することは、主体的な学びへの大きな手立てとなる。子どもを主語にすると、教師主導の学習は大きく変わる。具体的には、子どもが、
〇自分の学習課題を選ぶ。
〇学習の順番を決める。
〇学習の方法を決める。
〇学習に必要なワークシートを決める。または、開発する。
〇誰と学ぶか、誰と交流するかを決める。
〇学習のまとめ方を考える。となる。
 子どもは、読みの観点から初めの「大造じいさんとガン」の魅力を発見し、深く追究したい課題を決めた。学習計画では、どんな一人学びができそうかを全体で交流した後で、追究する順番や方法、まとめ方等を明確にした上で各自学習を進めていった。学習の順番や方法、ワークシート等を選択することは、必然的に学習が多様に分化していくことを意味する。しかし、この「選択」こそが、主体的な学びには最も大切なことだと考えている。実際に、子ども達は、追究を始めると「心情の変化を表にまとめたいので、枠のシートをください。」「Aさんが、同じ課題で追究しているので交流したいです。」と、目的を持ってまとめたり交流したりしていた。自ら求める交流によって、自分の考えが広がったり、深まったりすることにつながった。今後も主体的な学びと対話のあり方を追究したい。
(滋賀大学教育学部附属小)