短歌に親しむ(その2) 〜我れ物申す〜
北 島 雅 晴

 万葉集研究の第一人者といえば、中西進氏。万葉集を教材とした小中学生向けの授業を行っている。著書『中西進の万葉未来塾』(朝日新聞社)を参考に、前回につづき万葉集を教材として授業を行った。
 今回は、大伴家持の作品。
 石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふ物ぞ鰻とりめせ
【大意】石麻呂さん、あなたに言いたのですが、夏痩せした人によいそうですから、鰻を食べてください。

 まず私が、次のような会話を演じて見せた。歌に示された状況をつかむためである。(石:石麻呂、家:家持)
家:やあ、石麻呂さんお久しぶりです。暑い日が続きますね。ちょっとお痩せになったのではありませんか。
石:そうなんですよ。暑くて食欲がなくて‥。
家:そういう時は、いいものがあるんですよ。鰻を捕って食べると元気が出ますよ。
石:そうですね。一度食べてみます。

 今回の学習では、
○学級の友達に呼びかける作品をつくること。
○石麻呂さんと違って、友だちの良さを表現すること。
○「〜さん、我れ物申す」の部分をそのまま使うこと。
という約束事をもとに、短歌を作った。15分ほどで、全員が作り終わった。次の時間に、歌会を行うことにした。

 次の時間。30首の作品を一覧表にしたプリントを配った。作者は抜いてある。気に入った作品を5首選ぶ。自分の作品は選ばない。特にお奨めの1首を選び、感想を書く。以下、高点首を挙げる。(名前はすべて仮名)
 ◇さきさんに我れ物申す大人でも きれいなおどり笑顔くぎづけ
 ◇あきらくん我れ物申すまんめん の笑顔がいつも絶えず変わらぬ
 ◇たけしさん我れ物申すテストの 時かしこい頭少し貸してよ
 ◇さくらさん我れ物申す元気ある 春夏秋冬たよりがいある

C:「笑顔くぎづけ」という言い方がとてもよいと思いました。
C:いつも笑顔で明るい様子がうまく表されています。
 各作品の点数が出た後は、このような感想を出し合う場を設けた。 句会や歌会を行うと、得点が偏って票が入らない作品が出る場合も多いが、今回はすべての作品に票が入ったのも収穫であった。だれが作っても、ある程度のものを作ることができるということが分かった。次回は「我れ物申す」ではないが、友達や家族に歌を贈るような活動ができないものか、と思案中である。
(草津市立志津小)