子どもが読む・子どもが話す
西 村 嘉 人
初任者の学級で「白いぼうし」の授業を1時間させてもらった。実に18年ぶりの「白いぼうし」の授業だった。 学習のねらいを「松井さんの人柄を文章を手がかりにとらえる」を設定し、第一場面から第三場面まで指導を進めてきたが、「松井さんは優しい」「松井さんは親切」から抜け出せず、子どもたちが自分の言葉で松井さんの人物像をなかなか表現しようとしない、とレベルの高い悩みを担任が話してくれた。 さて、授業である。 第四場面を一斉音読したあと、松井さんの見たこと、聞いたこと、したことがわかる文に線を引きながら黙読をさせた。線を引いた文を小グループで交流し合いながら、どんな松井さんが想像できるか自由に話し合うように指示をして、グループを巡回した。 C 松井さんが運転しながら男の子の様子を想像して一人で笑ってるやろ。 T どこかわかる? C これって変やん。一人で想像して一人で笑ってるって。 C なんで? C だってお客さん乗ってるやん。仕事中やで。 と、松井さんの様子で盛り上がっているグループ。 C 女の子がいなくなってあわててるやろ。女の子はどこへ行ったんやろ。 T どう思ってるの。 C わからん。 T 他の人は? T もんしろちょうになったと思うけど。 C そんなんありえへん。 C けど、他に手がかりないで。 C ちょうどいなくなったときにちょうが出てくるやん。 C それに、よかったね、の声が松井さんには聞こえてきましたって書いてるから、松井さんは特別やねん。 C ぼうしから逃がしてやったからやん。 と、一気に核心に迫っているグループ。 時間を見計らって、個人で、 「○○している松井さん」 と、今日の学習で見つけた松井さんを表現するように指示をした。 「面白いことを考えている松井さん」 「特別な声が聞こえる松井さん」 「女の子がいなくなってあわてている松井さん」 それぞれ自分の言葉で松井さん像を表し、その根拠も発表できた。 わたしは、「ほうっ」とうなずくだけで、子どもの言葉を楽しんだ。子どもが自在に言葉を読み、楽しい国語の時間を造り出した。 (彦根市立高宮小)
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