公示された新学習指導要領に思う
森  邦 博

 3月31日に文部科学省から小・中学校の次期学習指導要領が公示された。キーワードを整理してみたい。
 総則第1の2では「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」を通して生きる力を育むとしている。そのためには、
 1 基礎的・基本的な知識・技能の習得
 2 活用力、すなわち課題解決のための思考力、判断力、表現力の育成
 3 主体的に学習に取り組む態度・協働を促す教育の充実と学習習慣の確立
が挙げられた。このうち3の「協働を促す教育の充実」が新しい。

 指導に当たっては三つの実現を目指すとしている。すなわち
 ア)知識及び技能の習得
 イ) 思考力,判断力,表現力等の育成
 ウ) 学びに向かう力,人間性等の涵養

 そのために、二つの点を大切にしてカリキュラムマネジメントを徹底するとしている。3月までを見通し、また小学校6年間の教育課程の系統と関連を学校全体で共有して、
 A)共同・協同の取組
 B)柔軟で計画的・継続的な取組
を重視しており、「PDCA」による学校教育の確かな評価改善のこれらはこれまでも実践を通じて取り組んできた。今後もその成果を踏まえ充実を目指すことが大切となる。

 特に注目するのは「深い学び」である。授業改善の目標は「深い学び」であるとし、その必要条件が「主体的、対話的な学び」だと解説されているからである。
 「子供同士の協働、教師や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自らの考えを広げ深める」(=対話的な学び)と、「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる」(=主体的な学び)の充実が一層求められている。
 子どもたちが活動的に自分の考えや意見を表出し、交流し合って深め、広げ、言語活動に積極的に、しかも工夫して粘り強く取り組み、そのことに充実感を感じ、感想を述べている。こんな国語の授業は魅力がある。が、「深さ」に目を向けるならば、見える姿の質はどうかという視点で見てみることこそ大切になると思う。
 それは、子どもたちに言語活動により自らの考えを広げ深めようとさせたか、どのように次につなげる意欲や態度、習慣を育てようとしたか、学習の過程・形態・方法の工夫や配慮は適切であったかという指導の評価改善に通ずると考える。「深い学び」を子どもの内面にどの様に構築していくのかである。
(京都女子大学非常勤講師)