物語の「おすすめフレーズ」
岡 嶋 大 輔

 5年生の教室。毎週火曜日の朝は読書タイムなのだが、子どもが読んでいる本を眺めていると、図鑑、漫画のような読み物、怖い話等、それぞれの子が読んでいるものが固定していた。  担任としては、他のジャンル、とりわけ文学的な文章を手に取るきっかけを提供したいと思い、この読書タイムで読み語りをしたり、国語の時間にもそういった思いで授業を進めたりした。

 読書タイムで読み語りをしたのは、短時間で読めそうな「ショートショート」だったり、高学年でも楽しめそうな「絵本」だったりした。そしてそのジャンルの楽しさを感じ、その世界に入り込む子も少なからずいた。
 国語の時間では、子どもが「読みの視点」を手に入れ、様々な文章を深く味わえるようにしたいと願いながら授業を進めた。「読みの視点」とは、「人物の言動から分かる人柄」「様子が目に浮かぶような表現」「物語の構成」等々である。出合った文章をそういった視点で読むことで、その物語の楽しみ方、読み方を知ることができ、自分から「いいな」と思う本を探して読書の世界を広げられるものと考えている。

 今回、「わらぐつの中の神様」(光村5年)と、杉みき子さんの9つの作品を扱い、杉みき子さんの物語のよさを感じることをねらいとして学習を進めた。
 授業の中で「おすすめフレーズ」を書くという活動を設定した。
 「おすすめフレーズ」は、物語で一番変化したことを挙げ、その理由を問うように作る短い紹介文である。授業では、既習の教材「大造じいさんとガン」で私が作った「モデル文」と「それに至るまでの過程」を示した。それをモデルとし、「わらぐつの中の神様」で一番変化したと思うこととその理由を学級で交流した後、「わらぐつの中の神様」における各々の「おすすめフレーズ」を作っていった。

 国語が得意な子が作った文。
「わらぐつのことを『みったぐない』と思っていたマサエ。そのマサエの思いを変えたおばあちゃんの話とは!?」
 国語が苦手なR君が作った文。
「おばあちゃんの迷信を信じたマサエ。その話とは…。」
 後者は表現が拙いとしても、どちらも、マサエの変容を意識して読めているのがいい。

 その後、他の杉みき子作品でも「おすすめフレーズ」を作っていった。作りながらR君が、「初めて自分でこんなに長い小説(物語)読めたわ。」と話し掛けてきた。今後も自分から少し長いと感じる物語を手に取るかどうかは分からないが、それを読むよいきっかけづくりになったのではないかと感じている。
(野洲市立野洲小)