想像を広げて読み、お話を楽しもう 『たぬきの糸車』
海 東 貴 利

 登場人物の様子や気持ちを文中の言葉を頼りにしながら、想像を広げて楽しく読めるようにすることや登場人物の言葉を自分なりに考え、想像を膨らませながら登場人物になりきり、音読を工夫して表現する喜びを味わわせるために、「想像を広げて読み、お話を楽しもう」という学習をした。
 この学習では、主となる言語活動に「吹き出し」というツールを使った。文中にない登場人物の内言を想像して吹き出しに書かせ、友だちと対話形式で発表させることで、想像を広げ、お話を読む楽しさを味わわせたいと考えた。吹き出しに書かせた場面は、次の場面に絞った。@おかみさんが罠にかかったたぬきを逃がしてあげた場面。A帰っていくたぬきを見たおかみさんときこりが会話する場面。B山へかえったたぬきが仲間のたぬきと会話する場面。
 Bの学習では、たぬきの仲間を架空の登場人物として設定し、お話の続きを想像させることにした。仲間のたぬきが見たことのない糸車のことやおかみさんへの恩返しなどに興味や関心を持って、たぬきに質問を繰り返したり、感想を述べたりするという児童の反応を予想した。

 実際の授業では、次のような吹き出しを書いていた。(タ:たぬきの会話文、ナ:たぬきの仲間の会話文)
ナ 「なにかいいことあったの。」
タ 「糸車をまわせてたのしかったの。」
ナ 「なん日まわしたの。」
タ 「ふゆからはるまで。」
ナ 「すごいね。つかれなかった?」
タ 「ぜんぜんへいき。ぎゃくにたのしかった。」
ナ 「どれだけ つむいだの?」
タ 「山ほど。」
ナ 「いつかぼくたちも糸車まわしたい。」
タ 「じゃあ見せてあげる。」
ナ 「見たい、見たい。」 …

 @、A、Bと活動を進めていくうちに、子どもたちは主体的に学習するようになった。
 主体的な学習への仕掛けとして、今回はワークシートの工夫に効果があったと感じる。脚本形式の会話文ではなく、対話形式に図示された「吹き出し」に書くという学習活動がよかったのではないかと考える。(上の写真)
 他の児童の考えた会話文を読んでも、「(きこり)たぬきが糸をつむいでいるのを見たいな」とか、「(たぬきのなかま)自分も糸車をまわしたいな」「(たぬきのなかま)[おかみさんの小屋は]どこらへんにあるの。」「結構近かったよ。」など、想像を広げて、お話を楽しんでいる様子がわかった。「吹き出し」を使った学習活動は、登場人物になったつもりで場面の様子を想像し、教科書にない言葉を考えて会話の文を考える学習に有効だった。登場人物の気持ちや行動に共感しながら、想像の世界を広げることができたのではないかと思う。
(高島市立マキノ南小)