司会を育てる
岡 嶋 大 輔

 何かルールが必要な時、大人に「こうしましょう」と言われるよりは、自分達で意見を出し合って決めることで納得ができる5年生。とはいうものの、よく発言する数名の意見を「それでいい」とすぐに受け入れておしまい、という空気があるのも気になるところであった。

 そこで、何かを決めるような場面に遭遇したときに、各々が自分の意見を出し合い、それらをすり合わせて結論を出せるようになってほしいと願って学習を進めた。

 活動には、朝学習の15分間、テーマによっては授業の45分間を使った。4、5人の生活班になり、教師が設定したテーマで話し合って結論を出すようにしていった。その班の中で順番に司会を回すことで「司会を育てたい」という思いがあった。司会を育てることによって、全員が話すようにしたり、話しにくい子の思いを引き出したりする意識を持つ子が増えるだろうと考えたからである。

 今回、司会マニュアルや話形のような「型」は示さなかった。よりよい話し合いを意識しつつ自然に意見を交わしてほしいという思いがあったからである。その代わり、「全員が意見を出せましたか」「話題からそれないように話し合えましたか」等といった『項目』と「よかった意見や話し方」といった『記述欄』のある振り返りを大切にした。そして、「言葉につまった友達に『例えば自分だったらどうしているの』と聞いている司会の話し方がよかった、と書いている人がいたよ」と、振り返りのいくつかを私が紹介することで、よりよい話し方への意識づけを図っていった。

 話し合うテーマは、「漢字テストで点数を上げる勉強方法は」「どうすればみんなが納得し仲良くなれる席替えができるか」等といったように、多くの子に身近で、考えを出しやすそうな話題を、5年生の担任でアイデアを出し合って決めた。子ども達は、普段からそれらのテーマについていろいろ考えているようで、自然に楽しく話し合えた様子であった。

 しばらく意見を交わした後、司会を中心にして班の結論を絞っていく。例えば、先に挙げた「席替え」のテーマで、「好きな席を選びたい」「人で選んでほしくない」「男女も仲良くしてほしいから隣同士」という意見を満たす席替えの方法を考えた班があった。そのように、誰かの意見を一つ選んでおしまいというのではなく、出た意見を組み合わせたり統合したりするものが多かったのが嬉しい。

 「学級の全員が司会を経験する」効果は大きい。自分や相手の思いを大切にしながら結論を出そうとする意識が全体に広がっているのを感じている。
(野洲市立野洲小)