心に響くこの作品 わたしはこう読む!〜椋鳩十作品の魅力を読書座談会で語ろう〜
谷 口 映 介

 「物語の魅力」とは、どこにあるのだろうか。子ども達は、物語を読む中で多くの魅力を感じている。本実践では、子ども達の心に響いたことを中心に、読書座談会を通して椋鳩十作品の魅力を語り合うことを目指して単元を構成した。

【作品の魅力とは何か】
 導入では、既習の物語を振り返り、読んだ中で感じた魅力(心に強く残った・心に響いた・面白い)を出し合った。また、教師による読書座談会のモデルを見る中で読みの観点を自ら見いだすことを大切にした。そうすることで、目的を持って読む心構えができる。子ども達からは、「『ごんぎつね』では、ごんの心が物語の初めと終わりで変わって行くのが心に残った。」「『モチモチの木』では、じさまと豆太のきづなが心に残った。」「人物の言葉がいいなと思った。」などの感想が多く出された。話し合う中で、次の三つの観点に絞られた。
◎人物の行動や会話
◎人物の心情の変化
◎文章表現(情景描写・色など)

【『大造じいさんとガン』の魅力】
 第二次では、ミニ読書座談会を行いながら観点ごとの魅力を語り合った。座談会には、「こう読む!物語魅力シート」のメモをもとに、まずは自分の意見を明確にしてから臨むように促した。物語魅力シートには各観点のメモ・振り返り欄と共に、全文を一目で見渡せるシートを四つ切り画用紙に貼り合わせた。子ども達は全文シートに色分けをしながら何度も読んでいた。座談会は、司会者は立てず、自由な雰囲気の中で自分の読みを言い合う。この時、メモを読むのではなく、相手の意見を受けて語るように促した。子ども達は、ミニ読書座談会に移る前のモデルチーム(ここで言うモデルとは、見本ではなく、交流の観点を確かめたり、話し方の良さを見つけたりするためである)や導入でのモデルを思い出しながら自分の意見を話していた。第1回目のミニ読書座談会こそメモを見ながら話す姿もあったが、繰り返すごとにメモを全く見ずに全文シートを指し示しながら話す姿が見られるようになった。1時間の終わりには、振り返りの時間を設け、「なるほど・そうか」など、交流を通して得られたことを全体で交流した。

【椋鳩十作品の魅力を語る】
 第三次では、今までの学びを活かしながら、自分の選んだ作品の魅力を語る最終の読書座談会を行った。観点は第二次と同じであるが、他の作品との共通点も交流のテーマに加えた。交流を通して、「どの作品も動物と人間との共存を描いている」「動物も人間と同じで頑張って生きていることを言いたいのだろう」「読者の想像に委ねる表現が多い」など、主題や表現方法に迫ることができた。
(滋賀大学教育学部附属小)