ペア・グループ学習で学ばせたいこと、気づかせたいこと
西 村 嘉 人

 運動会が終わり、校内に少し落ち着きが戻ってきた。校外学習や音楽会などの行事がまだまだ残っているが、子どもたちの生活も教室中心に移ってきている。
 校内研究もやっと2学期のスタートである。わたしの勤務校では、グループやペアの活動を学習過程の中核に取り入れ、「学び合い・教え合い」を通して学ぶ意欲と学ぶ力を高めようと昨年度から研究を続けている。学級担任全員が研究授業を行い、授業改善に取り組んでいる。

 運動会後の9月下旬、1年生の「よんで たしかめよう 『うみのかくれんぼ』」の授業を参観した。
 授業は、もくずしょいのかくれ方を読み取る時間である。学習範囲の音読を何度か繰り返し、文に線を引いて、書いている内容を確かめる学習へと進む。子どもたちは、音読で十分内容を理解しているようで、ペアで相談するまでもなく、生き物の名前やかくれ方の記述に線を引いていった。確かめの発表もスムーズで、子どもたちが、先の2時間で積んだ学習経験が力になっていることがよく分かった。学習した内容を学習プリントに書く活動も、先生が、
「困っている人がいたらペアさんで教えてあげてね。」
の言葉かけが必要ないぐらい一人ひとりがしっかり取り組んだ。
 しかし、この後の、
「もくずしょいのかくれ方と前に勉強したはまぐりやたこのかくれ方はいっしょかな。」
の発問で子どもたちの様子が変化した。それまで自信満々で学習していた子どもたちが、
「えっ!」
と小さくつぶやいたのだ。そして、
「いっしょやと思う。」
「ちがうと思う。」
の声がばらばらと起こったのである。
 結局、この発問は数人の意見発表で終わってしまったのだが、この時間こそがペアやグループでの学習時間だったのではないかと感じた。想起していなかった課題に戸惑った子どもたちは、グループのメンバーに尋ねたり文章に立ち返ったりして考えたであろうと想像できたからである。

 10月に入って、3年生「場面の移り変わりをとらえて 感想をまとめよう 『ちいちゃんのかげおくり』」の授業を参観した。お父さんが出征する前日に家族でかげおくりをする場面の授業である。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ちいちゃんの会話文をグループの4人で役割音読して、人物の気持ちを想像する学習が中心活動であった。
 わたしが主に参観したグループは、学習リーダーの女子が役割分担を手際よく仕切り、全員が登場人物の役割音読を経験することができたグループであった。このグループには、個別に学習支援が必要なYさんもいたのだが、ちいちゃん→お兄ちゃん→お母さん→お父さんと4回の役割音読をグループのメンバーと行った。そして、「ひさしぶりだなあ。かぞくでするのははじめてだ。」と家族とかげおくりをするお父さんの気持ちを想像しプリントに書くことができた。
 一斉学習であれば、集中が続かないYさんが4回の役割音読にしっかり取り組み、しかも人物の気持ちを想像してプリントに書き込むことができた。グループ活動の成果であると考えられる。
 多くの時間を音読に割いたために、想像した気持ちを全体で交流する活動は十分とは言えなかったが、一人ひとりの学習活動は十分であった。

   今後、アクティブ・ラーニングの導入が試行錯誤で進んでいく。子どもたちの主体的な学習、ペアやグループを活用した学び合いに重きが置かれるようになる。「何を」学ぶための「ペア・グループ学習」なのかを校内研究では考えていきたい。「ペア・グループ学習」が目的ではなく、手段であることを確かめながら。
(彦根市立高宮小)