正しく読む だれがでてきましたか
海 東 貴 利

 1年生の読むこと『おはなしのすきなところを、そうぞうしながらよもう』という単元で、「ゆうやけ(光村1年上)」を使って、単元の出口に教材のすきなところの音読発表をする学習をした。

 「ゆうやけ」は、新しい赤いズボンを穿いた狐の子が草原で熊の子と兎の子に会って遊ぶお話である。狐の子は初めは自分の新しいズボンに熊の子や兎の子に気付いてほしいと思いながら遊んでいたが、遊びに夢中になっているうちにすっかりそのことを忘れてしまう。しかし、夕焼けを見たことをきっかけに熊の子と兎の子が狐の子の新しいズボンに気付き、狐の子も嬉しそうに答えるというお話である。

 大まかな単元の構成は、以下の通り。第1次に、教師の範読を聞いた後、これまでの学習を思い出してどんな学習ができるか、1年生なりに考え、学習計画を立てた。第二次では、好きな場面を音読するために、登場人物の行動や会話文をていねいに読んで、場面の様子を想像しながら読むことにした。第三次では、好きな場面を選んで、友だちに音読を発表し、どんな言葉の力がついたのかを最後に振り返ることにした。

 第二次の学習の中で、物語の登場人物を確かめたときのこと。教師のお話の中に「だれがでてきましたか」の発問に、1年生は勢いよく手が挙がった。
「きつねです。」
 子どもたちの反応は、その通りという頷きと他にもあるぞという気持ちが表れた挙手。次の子を指名すると、「くまです。」という答えだった。
 教師は教室の全体の様子を見ながらうんうんと頷いて、「まだいるかな?」と聞くと、またまた勢いよく手が挙がり、「うさぎです。」と子どもが発表した。「これでいいのかな?」と再び聞くと、1年生は登場人物ではないものまでその答えになるのではないかと考えたのか、「おがわです。」「ズボンです。」という発言も出てきた。

 そこで、黒板に箇条書きに書いた子どもたちの発言を一つ一つ確認していくことにした。「お話の中に出てくる『だれ』というのは、話したり、動いたりした人や動物など」であるということを押さえ、おがわやズボンが違うことを確かめた。
 残ったのはきつね、くま、うさぎになったが、これらも全て違うと教えた。「どうしてなの。」という声が上がる中、すぐに気が付いた子が呟いた。
「きつねじゃない、きつねのこだ。」
「あっ。きつね(だけ)だったら、大人のきつねもきつねになる。」
「なるほど、くまじゃなくて、くまのこって書いてある。」

 この呟きで、教室の雰囲気が一気に変わった気がした。かわいい挿絵を見て、勝手にかわいいきつねとくまとうさぎが遊んでいることを想像していた1年生が、言葉を頼りに正しく読むきっかけをつかんだ。お昼から夕方まで仲良く夢中で遊んでいるのは、きつねとくまとうさぎの子どもたちなのだということを想像して読むことができるようになった。
(高島市立マキノ南小)