おじいさんの表情を想像し、音読の仕方を工夫する
海 東 貴 利

 この時期の1年生の子どもたちは文章や挿絵からいろいろな情景や登場人物の気持ちを想像することができる。しかし、勝手な読み取りや読み誤りもある。1年生のこの時期だからこそ、叙述に即して読むことの大切さにふれる指導をしながら、物語を読むことの楽しさを感じさせたいと思っている。

 『おむすびころりん』(光村1年上)の第3時。「音読の仕方を考えよう」を本時のめあてにした。物語の各場面のポイントとなる部分を取り上げて、登場人物(おじいさん)の行動やその様子からおじいさんの気持ちを捉え、音読の仕方を考える学習を行った。

 三の場面(のぞいてみたがまっくらで、みみをあてたらきこえたよ。おむすびころりんすっとんとん。……。)
 はじめに、おじいさんの気持ちを想像するために、おじいさんの表情を考えさせることにした。あらかじめ、教師がいくつかのおじいさんの表情のイラストを提示し、子どもたちにその中から選択させた。提示した表情は次の4つ。@にこにこ顔、A怒り顔、Bはてな?顔、C悲しい顔。

T 耳をあてたときのおじいさんはどの顔をしていたかな?
C1 悲しい顔です。どうしてかというと、おむすびを穴に落としたからです。
C2 にこにこうれしい顔です。どうしてかというと、穴からおむすびころりんって聞こえてきて、おもしろそうだったからです。
C3 にこにこ顔です。どうしてかというと、穴から、ねずみのうたが聞こえてきて、楽しいからです。
C4 はてな?の顔です。どうしてかというと、穴の中は真っ暗だし、中に何があるのかわからないと思うからです。
T なるほどね。「みみをあてたら」って、どうすることかな。みんなやってみて。(その場で動作化させてみる)そのときどんな顔になる?
C5 なんだろうって顔になる。静かに聞こうとしているときにする。

 この後、おじいさんが言ったことを想像して、ワークシートの吹き出しに書かせた。
 そして、どのように、音読すればいいか考えさせた。読み方が工夫できる子から発表させた。殆どの子が、「おむすびころりん…」の部分を小さい声で読んだ。
T どうして、小さい声で読んだの?
C6 どうしてかというと、おじいさんは何だろうと思って聞いているから「おむすびころりん…」は小さいと思います。
C7 どうしてかというと、おじいさんは耳を穴にあてていたからです。大きい声だったら、耳をあてなくてもよいからです。
C8 どうしてかというと、穴は真っ暗だし、おじいさんも何だろうなあと思うくらい、歌は小さかったからです。
T そうだね。「おむすびころりん」の読み方は、おじいさんの様子や顔を想像すると工夫できるんだね。

 工夫して音読させた場面では、次のようなやり取りもあった。
C9 「おむすびころりん…」のところを小さく読んだわけは、おじいさんはねずみの歌がすごく小さいなと思ったからです。
C10 おじいさんは、まだねずみに会ってないなあ?
C11 そうそう。おじいさんは、穴に落ちたときにねずみの踊りを見たんだから。
C12 ぼくたちはねずみが歌っているって知っているけど、おじいさんはまだねずみのことは知らない。
C9 あー。そうだった。…

 物語の大体をつかみながら、叙述に即した読みが少し生まれた楽しい読みの場面だった。
(高島市立マキノ南小)