巻頭言
理科の楽しさと探究心
平 賀 正 樹
 理科の楽しさは探究心を育むことだと考えます。私の場合、探究心は「師」によって育まれました。少し私と理科について振り返ってみます。

 小学生の頃、担任の先生が全員に課題として「発見ノート」というものを課していました。発見ノートとは、1日にひとつ発見したことを日記として書くといった形式のものでした。30年程たった今でも思い出せる記事が1つあります。「氷はなぜ水に浮くのか」というタイトルです。内容は書籍を読んで知った事実をそのまま書き写したものにすぎません。想い返せば、「全ての現象には理由がある」ということを子どもながらに伝えたかったのだと思います。やがて中学生となり、最も成績が良かった科目は理科でした。高校では化学を得意としていました。その理由のひとつは「師」だと言えます。中学3年生時の担任は、高校の教員免許も持っていて、教科書に記載されてないことまで説明をしてくれました。高校生の頃は塾の先生が、やはり現象の理由を大切に指導してくれました。

 科学教育は、小学生では生活、中学生では理科、高校生では化学や物理などと名称は変わります。しかし、その全てにおいて「氷はなぜ水に浮くのか」を学びます。同じ現象の理由を、ある学齢で理解したはずなのに、次の学齢ではさらに新しい世界が広がり、理解が深まることに、興奮するばかりでした。

 私は、社会人になり職業として予備校講師を選びました。ある日、「受験生が化学に興味を持つ授業」という題目で講義をすることになりました。もちろん私は迷うことなく、氷が水に浮く理由を、とことん生徒に伝えることに決めました。その内容は高校生にとって、そんなに簡単なものではありません。授業後のアンケートで「わかりやすさ」の項目はとても評価が悪かったことを覚えています。しかし、自由記述欄に多くの生徒が、「難しいけど、勉強して理解したいと思いました。」といったものが多く見受けられたのです。生徒の探究心を育み、自ら学びたいという意思を持たせることに成功したのです。

 現在、私は転職して、公教育をサポートするサービスの開発に従事しています。関わり方は直接的ではございませんが、サービスを通して、子ども達の探究心が育まれることを切に願います。
(元塾講師)