「心のぐっとシート」で人物の関わり合いを読もう 〜なまえつけてよ(5年)〜
谷 口 映 介

 5年生になって初めての文学的な文章である。ここでは、前学年までの物語文の読み方を想起させると共に、登場人物どうしの関わりが、どんな出来事を通して、どのようにかわっていったのか、また、心情が表れている表現に着目して読み、感想を伝え合い、自分の考えと友だちの考えとの違いに気付き、よさを交流することをねらいに実践した。

◎「心のぐっとシート」を書こう
 登場人物の心情の変化を捉えるにあたって開発したものが「心のぐっとシート」である。これは、登場人物どうしの心がどの瞬間にぐっと近づいたのか(『ぐっとポイント』を表すシートである)。  シートには、中心人物である「春花」の心情の変化を物語の初めと終わりで比較できるようにした。同時に、登場人物どうしの関わりを読み解く上で重要な「勇太」の初めと終わりの姿も書き込めるようにした。どちらも人物の会話や行動を手掛かりに考える様に促した。その上で、「春花」の心がぐっと近づいた『ぐっとポイント』を見つけ、なぜそこで変わったのかを考えることができるようにした。

 『ぐっとポイント』の交流では、全文掲示に名前シールを貼り、まずは同じ文を選んだ者同士で交流をした。子ども達からは、次の様な意見が出された。
C 私は、「受け取ったものを見て、春花は、はっとした。」という一文を選びました。「はっとした」ということは、ただびっくりしただけではなく、春花が馬に名前をつけられなかったのを勇太が気遣ってくれていたことに気付いたということを表していると思ったからです。
C ぼくは、「勇太って、こんなところがあるんだ。」という文を選びました。折り紙を渡されたことで勇太の優しさが分かり、心が変わったと思います。自分の悲しんでいる訳を理解してもらってうれしかったと思います。

 次に、違う文を選んだ者同士でも交流した。二段階の交流を仕組むことで、多様な意見に出合うことができ、なるほどと納得することや自分の考えが更に深まることが多くある。また、更なる疑問が生まれ、話し合いが活性化するきっかけともなる。大切なのは、なぜ交流するのかを子ども自身が自覚していることである。交流後の感想では、「Kさんの考えを聞いて、自分の考えが変わりました。牧場のおばさんに言われた『名前つけてよ』と勇太の『なまえつけてよ』の違いが分かりました。」との考えの変容も多く見られた。何より、自分の考えを伝えようとする姿や相手の話を目的を持って聞く姿が見られるようになった。今後に繋げていきたい。
(滋賀大学教育学部附属小)