▼若い頃、「先生、今日の勉強は楽しかったよ」という言葉を子どもがかけてくれることがうれしかった。いい授業ができたと思っても、ほとんど授業についての感想がない授業もあった。教師の思ういい授業と子どもが考えるいい授業との間に少しのズレがある。このような経験から、国語科においていい授業は、子どもが真剣に文章を読み、話し合い、考える授業という形ができていった。

▼澤田佳予子校長先生(刈谷市かりがね小学校)が『先生、次の時間も国語にしよう!』を出版された。国語大好きの子どもを学校ぐるみで作られた3年間の成果である。始まりは、一人の新任教師の授業参観からと述べておられる。「いうべきことを言わないで、言わなくてもいいことを言っている」という指摘を受け、その後、子どもが変わっていったという。

▼授業事例は、すべて、澤田校長先生が参観し、授業記録を作り改善の視点を示されたものばかりである。「みんなの言葉で埋め尽くした授業」「言葉が生まれ広がる授業」「素朴な疑問が授業をゆさぶる」「こんなにも子どもだけで深く読む」「友達と話し合って授業をつくることに誇りをもつ」など魅力的な授業像がならぶ。「教師の想像を超える意見が飛び交う授業です。どれだけ教材研究をしても、45分間の中教師の想像を超えるあっと驚く意見がでてきます。必死になって、子どもの意見に耳を傾けるだけです。」(教師3年目)

▼新しい時代に向かって教育が動いたこの頃、澤田校長の教育観という視点で読んでいくと学校経営の奥深さが伝わってくる。(吉永幸司)