「漢字の成り立ち」を学ぶ
岡 嶋 大 輔

 五年生、「漢字の成り立ち」についての授業。
 教材づくりには、樂篆家、高橋政巳さんが書かれた「感じの漢字」という本を活用した。
 この本には、「筆で書かれた味のある古代漢字」、「漢字の語源を端的に楽しく解説した文」が書かれている。さらに、高橋さんが面白いと思った漢字を厳選し、テーマごとに分けて紹介するという構成となっている。とにかく面白く、漢字の奥深い世界にどんどん引き込まれていく内容である。

 授業では、例えば、次のような漢字を扱った。一つめは横線の上に足跡が乗っているもの、二つめは、その横線と足跡とが少し離れているもの、三つめは横線を挟んで前後に足跡があるもの。これらは現在のどの漢字に当たるのか考えを出し合った。子どもの考えは、「土」「外」等、なかなかいいところまで辿り着く。このように、漢字を作った古代の人の思考に近づき、想像することは楽しく、漢字を学習していく上でも意義のあることであろう。これらの漢字について、作者はこう説明している。線のところにいるのが「止」、線を一歩踏み出すと「出」、一歩でも前に進めば「歩」。古代漢字と現在の漢字とがつながると、子どもからは「おお!」「なるほど!」という声が上がった。先人達の智恵に触れた感激であろう。

 この本の最後には、「幸」という漢字の語源について書かれている。授業の最後でも、この「幸」の字を扱った。「幸」は象形文字である。では、何を形どったものなのだろうか。「お金」「食料」「自然」「家族」等々、子どもは、自分の幸せ観をもとにどんどんと発表していった。
 たくさん挙がったところで、「幸」の字が「手かせをはめられた人の姿」を表したものであることを明かした。「えっ?」「どうして?」という子どもの反応。
 そして、高橋さんの書いた後書きを読んで聞かせた。「もし、あなたが『幸せ』を字で表したとしても、はたして他の人に通じるだろうか。…幸福感があまりにもまちまちなので、『幸せ』を表すために、最大の不幸のイメージを用いたわけだ。このダイナミックな発想の転換は、目からウロコの鮮やかさである。」「古代の人々の観察眼、デザイン力、物事の考え方の深さに驚かれたことだろう。」そのようなことが書かれている。子どもも「納得」といった表情。授業後は、この本を取り囲み読む子ども達の姿があった。

 ある内容を深く追求し、その末に得た感動を読者に伝えている本を見つけることは、教材づくりをする上で重要なことの一つなのだとあらためて考えさせられた。
(野洲市立野洲小)