一 つ の 包 み
伊 庭 郁 夫

 四月、一つの包みが我が家に届いた。段ボールに詰まった資料は、一人の二年生の子どもの国語ノートや作文ノート等である。国語ノートがあまりに分厚いので長さを測ってみた。B4版で約四・五センチメートル。分量もさることながら、その質に圧倒された。送って頂いたのは、山田定子先生。
 書くことは勿論、子ども一人ひとりの国語力を少しでも向上させようと取り組まれた子どもと教師の宝物である。余りに重みのある資料なので、一部の紹介になることをお許し願いたい。

 まず、第一に丁寧な視写。一字一字丁寧な書きぶり。促音・拗音・かぎ括弧・句読点などは、四等分された部屋のどの箇所に書くのかを考えるようになっている。一年生・二年生にありがちな「は」と「わ」、「を」と「お」、「へ」と「え」などは、間違えやすいので、色鉛筆で自分で確かめるわけである。
 この視写も、二年生の終わり頃には教師とほぼ同じ速さで書けるようになってきたそうである。積み上げの大切さ。根気強く取り組むことの大切さを改めて思い知った。

 第二に、主体的な学びを育てる授業が思い描かれるものであり、それを具現化したノートであること。アクティブ・ラーニングという言葉をよく耳にするようになった。まさしく、これからの授業のイメージと重なる。
 例えば、単元のはじめに、「どんなはなし」「すきなところ」「おもしろかったところ」「ほかにおもったこと」「べんきょうしたいこと」を書かせる。説明文では、は「どんなはなしなのか」「はじめてしったこと」「おどろいたこと」「ふしぎにおもったこと」「ほかにおもったこと」「べんきょうしたいこと」を書かせる。どちらも「べんきょうしたいこと」を自分の頭で考えさせるのである。
 そして、基礎的な学習と発展的な学習を常に意識されている点も感心した。例えば、説明文「たんぽぽ」であれば、基本的な学習で「(あげはちょう)がえらんだたんぽぽのひみつはつぎの三つです。一つ目は、」のように確実な内容把握をされている。しかも、最後には「わたしは、たんぽぽはすごい花だとおもいました。なんでそうおもったかというと、ふまれたり、つみとらたりしても、また、生えてくるからです」のように自分の感想を書くわけである。そして、発展的な学習として(ひまわりのひみつ)(あじさいのひみつ)(ほうせんかとアリのともだちのひみつ)など一人ひとりがテーマを持って説明文を書いている。しかも、本を写すのでなく「春になると」「たねは、千こもありました」「さくらによって、花びらのまい数がちがうのがおもしろいなあとおもいます」「もう、ひまわりは、すっかりかれてしまいました。また、らい年おちたたねから、大きなひまわりがそだつのでしょうね」など、自分の頭で練り直し、自分の体験もふまえてまとめている点も驚きます。

 第三は、指導者山田先生の子ども大切にする姿勢。単元ごとに授業を構想したオリジナルノートを作り、丁寧に子どもの書いたものを評価し、更に子ども一人ひとりの書いたものを全部打ち込んで学級の財産にされている。子どもの想像力を豊かに引き出す世界に一つのノート。当然のごとく、保護者からのコメントに山田先生と子どもたちの一年間の国語学習の結晶への感謝が寄せられている。
 「こんなに分厚い冊子になってびっくりしました」「文章も上手になったし、作文も気持ちがよくわかってすばらしいです」「本読みもすごく上手になって感激です」「音読も毎日がんばったね」
 永年の実践、山田定子先生大変ありがとうございました。
(大津市立木戸小)