詩に対する出題と解答を経験し詩の情景を思い描く
海 東 貴 利
Cさんは、文字や文章を声に出して読むことが大変苦手である。音読すると、不自然なところで区切って読んでしまう。また、ふだん聞き慣れない言葉は明瞭に声を出すことができないでいる。そこで、学年当初から、言葉のリズムや美しさに気づき、言葉や文を声に出して読むことに少しでも慣れていくことを目標に詩の音読に取り組んでいる。詩の音読は国語の時間の初めに必ず行っている学習活動である。 先日、「きのうのかぜは(岸田衿子作)」を音読したときのこと。教室の窓の外を見ながら「今日の風はどんな風かなあ」と問いかけたところ、彼女は、「今日の風は、この(詩の)風とはちがうかなあ」と答えた。数回の音読を経て、詩の内容は大体理解できているように感じた。しかし、この詩の言葉の意味や想像できる情景をもっと彼女なりに明らかにすることができれば、もっと楽しく音読ができるのではないだろうかと考えた。 そこで、次の時間は、詩の内容をもとにしたクイズを出し合って詩の中身を考えることにした。Cさんと私で出題役と解答役を交代しながら進めた。 T「きのうのかぜはどんな風でしたか」…C「しょっぱかった」 C「けさのかぜはどんな風でしたか」…T「ももいろの風でした」 T「さっきのかぜはどんな風でしたか」…C「パンのにおいのする風でした」 T「きのうのかぜは、なぜ、しょっぱかったのでしょう」…C「海の上を吹いてきたから」 C「けさのかぜは、なぜ、桃色だったのでしょう」…T「桃の花びらを潜ってきたからです」 T「さっきのかぜは、なぜ、パンのにおいがしたのでしょう」…C「それは、焼けたパンが部屋にあって、その部屋を通ってきたからです」……。 このようにしてクイズの出し合いを続けていった。 彼女からは、次のような出題もあった。 ・「ももいろのかぜは、いつの風でしょう」…これは、時間を問う出題だった。 ・「きのうのかぜは、どこから吹いてきたでしょう」…これは場所を問う出題だった。 私からも、こんな出題をしてみた。 ・「三つの風の中で、鼻で感じたことを表した風は、いつの風でしょう」 こんなやりとりをしながら、詩のイメージを広げていった。そして、いつものように最後は音読をした。 次の日は、「きのうのかぜは」をまねて、詩を作ることにも挑戦した。 けさのかぜは C子 (高島市立マキノ南小)
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