「村一番の漁師」の条件とは? 「海の命」
箕 浦 健 司

 6年生の3学期。「卒業」という目標が具体的に意識できる時期が来た。小学校生活の集大成といえるこの時期、子どもたちの学習に臨む姿勢も、一段と意欲的、主体的なものとなってきている。本単元の第1時、教師の範読を聞きながら、
「クエってこんなに大きいの?」
「こときれる…? 死んだということ?」
「屈強な若者か。太一、すごいな。」
などというつぶやきが聞こえてきた。多くの児童が、この物語の魅力を感じている様子であった。

 小学校生活最後の読み物単元、この「海の命」で、子どもたちが主体的に、単元を通じて追求できる課題を設定できないかと考え、初発の感想をもとに、表題の課題を設定した。
「村一番の漁師は、誰がいますか。」
「太一の父です。」「太一です。」「与吉じいさも、そうだと思います。」
「では、『村一番の漁師の条件』とは、なんだと思いますか。」

 この日は、第二時。前時に初発の感想を書き、交流した後に課題設定を行い、現時点での自分たちの思う「村一番の漁師」の条件を考えさせた。以下は、子どもたちから出た意見。
「大きな魚を獲ること」「瀬の主を獲ること」「父を倒した、瀬の主を倒すこと」 「漁の腕も大事だけど、海の恵みに感謝する気持ちを持つこと」「捕った魚をすべて殺さず、生かしておくという感情があること」「海の命を大切にすること」「千匹に一匹しか獲らないこと」

 友だちの考えを聞き、なるほどと感心する人もいれば、自分と同じような意見に、「そうやんな」と頷く人もいる。活発な交流が行われた。ただ、現時点では、自分の考えの理由を明確にできている児童とそうでない児童がいる。また、自分の考えをもてない児童もいる。その子たちに、いかにして寄り添いながら、読みを深める手立てが打てるか、主体的な学びを保障できるかが重要である。

「詳しく読みを進めていきながら、答えをみんなで考えていきましょう。」
 設定した共通課題を意識しながら読みを進めていく中で、自分の考えに変容があったり、確信をもてたりする児童が出てくるだろう。それが学び合いの中で生まれれば、これほど素晴らしいことはない。一人でも多くの児童が学びの、そして学び合いの喜びを感じられるような学習活動を展開していきたい。
(長浜市立神照小)