自分でやってみよう 〜本を選んで読む〜
海 東 貴 利

 読書の記録カードがある。このカードには借りて読んだ本の名前や一言感想を書くスペースを設けている。読書が好きな児童は、このカードが何枚も増え、学年末になるとカードが束のようになる。しかし、特別支援学級のDさんの読書の記録カードはなかなか厚くならない。読書が嫌いではない。自分からすすんで読んでいないのは、視知覚の影響もある。Dさんは、聴覚優位であるため言葉を認識するときは、文字を声に出して聴覚で認識を強化している。だから、一人で読書をしているとぼそぼそと声を出して読む。また、学校図書室に行って自分で本を借りるときは、絵本の書棚から本を探すことが多く、比較的文字数の少ない本を求めて選んでいるようだった。そこで、読書に関わる力をつけるために、次のような活動に取り組んだ。

声に出して読む力を
 毎日、読み聞かせを続けている。本を読むことを通して、幅広い知識の獲得や豊かな想像力を持ってほしいと考えるからだ。読み終えた後は、よかった場面や感想を発表させたり、気に入った場面や登場人物のセリフを声に出して読み返したりさせている。
 3学期のはじめ、Dさんに読み聞かせを「自分でやってみよう」と提案した。Dさんは、「わたしが読むの?」「やっていいの?」と少し躊躇していたが、「読みたい」と返事した。その後、あらかじめ、教師が選んでおいた2冊の本の中から、読んでみたい本を1冊選ばせて読ませることにした。これまでも、何度か好きな場面を部分的に読むことはあったが、全部を読んでみるという意欲を見せたのは、この日が初めてだった。読み始めると、言葉に詰まったり、意味の通らないところで文章を区切ったりしてしまうこともあるが、Dさんがやってみたいと自分で決めたことが大変嬉しかった。成長の瞬間が見られた時間だった。

幅広い本の選び方を知るために
 これまで教師が読み聞かせをする本は、読み聞かせをするその時に児童に提示してきた。つまり、Dさんに読み聞かせしたい本を教師がDさんに代わって選書してきた。Dさんが自分で選んで読む本は、漢字の習得状況などもあり本の内容に偏りがあった。このようなDさんの姿を見て、本の選び方について教える必要があると感じた。
 読み聞かせコーナーという特設の学級文庫を設置し、教師が前もって選んだ本を数冊置くようにした。読み聞かせをする前に、Dさんがそのコーナーから自分が読みたい本を選ぶようにした。コーナーは定期的に本を入れ替え、「動物が出てくる物語を読みたいときシリーズ」、「作家○○さんが(他に)書いた絵本を読みたいときシリーズ」、「生き物のふしぎを見つけるシリーズ」など様々な内容やジャンルから「読んで欲しい本や読みたい本」を選ぶようにした。
 このような活動を行ったことで、さまざまなジャンルの本に親しむことができるようになり、また、選書の仕方の幅も少し広がったのではないかと思う。そして嬉しいことに、読書カードも増えた。
(高島市立マキノ南小)