「本はともだち」の教材研究
・本をえらんでよもう ・ずうっと、ずっと、だいすきだよ
吉 永 幸 司

1.教科書を読む
 教科書は、「本をえらんでよもう」(2p)と「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(ハンス=ウイルヘム)(8p)学習の手引き(2p)で成り立っている。「ずうっと、ずっと、大すきだよ」は、しっかりと音読し内容を理解させ、いい話だったという思いを共有したいお話である。「本をえらんで読む」という単元では、本を楽しんで読む子を育てる始まりと捉えると別の指導もあるように思える。そこで、教科書の構成について考えてみた。

(1) 本を選ぶということ  図書館で本を選んでいる4人のつぶやきの言葉がおもしろい。
A この本だなは、えほんのほんだなだね。
B ひょうしのえが、おもしろいね。よんでみようかな。
C 「くじらぐも」をかいた、なかがわりえこさんの本をみつけたよ。
D わたしは、「なぞなぞのみせ」という本をかりました。だいめいを見て、おもしろそうだとおもったからです。
 それぞれの吹き出しの意図が理解できる。Aは、選びたい本の場所への指示である。図書館利用指導の始まりである。Bは、絵本の所で探す方法である。「読んでみようかな」という動機づけである。Cは、作者であり、Dはかりた本の紹介である。「本を選ぶ」ことの始まりを、借りるという行動で示している。

(2) 「学習の手引き」で学ぶ
 「おもしろかったところはどこですか。」という問いから、次の活動を導いている。
○本をカードに書いて知らせることを目的に、「おはなしの木」のカードを作る。
○カードを集めて「おはなしの森」を作る。友達にカードに読んで思ったことを書く。
○外国の文章を、訳す・訳者という語で説明をしている。
 「学習の手引き」では、本の題名、出てくる人や動物、好きなところやおもしろかったところを書くことが主な活動である。本の紹介の始まりである。「友達のカードを読むと、読みたい本がふえるね」という吹き出しは、読書活動の誘いである。

2.教科書の用語を考える
 教科書を読み、立ち止まったのは次のところである。
○をよんで、すきなところやおもしろかったところはどこですか。
○「おはなしの森」ができます。
 先ず「おもしろい」という広い言い方を使い始めるのはいつ頃だろうかという意味で考えてしまった。大人にとっての面白いは、魅力ある物事に心が明るみ、目の前がぱっとひらけて晴ればれした状態である。あるいは、興味や関心を持つというのが一般的である。「ずうっと、ずっとだいすき」は、最後は死と向かい合う内容である。恐い話、辛い話、あたたかい話もすべて「おもしろい」でつつむことを指導するのは、何時だろうと考えたからである。
 次に、「おはなしの森」の「森」のイメージである。「森は人の心を癒やす。子どもたちを救うには森しかない」というC・W・ニコル氏の記事が印象に残っていたからである。「お話の林」でなく「お話の森」としたところに意味を見いだすと「お話の木」にも命が通ってくる。

3.「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(光村1年下)
 「さざなみ国語教室」の例会で好きなところを出し合った。一文、あるいは、一場面に限定するという方法をとった。選んだ文や場面、根拠が違った。身近な動物の死と向かいあう幅が広く奥が深いお話である。授業においては、深く読ませるか、読書に広げるか、指導に迷うところである。