場面とセリフ・役者・ナレーター
廣 瀬 久 忠

 本校二年生の学級で「名前を見てちょうだい」(東京書籍二下)の指導ができる機会を得た。
 単元のめあては「声や動きであらわそう」。八時間の各時間のめあては次の通りである。
@学習を見とおす。
A場面分けの手がかりを考える。
B自力で場面を分ける。
C場面の場所と人物をたしかめる。
D場面の声と動きを考える。
Eグループで声と動きであらわす。
Fグループで声と動きであらわす。
Gみんなに発表しよさを見つける。

 場面分けの方法を知り自力で場面のかわりめを見つける力をつけることが前半の大きなめあて。その場面の中から自分が声と動きを工夫したい場所を選んだもの同士がグループになり、叙述を手がかりに声と動きを工夫し発表するのが後半の大きなめあてである。
 場面の分かれ目を「ことばの力」のコラムから視写する。見極めるキーワードは「時間」がたつ。「場所」が変わる。新しい「人物」が出てくる。繰り返し「時間・場所・人物」と何度も連呼して記憶にたたき込む。全文に目を通してつぶやきながら分かれ目を探す。
 この三つで明快に場面を分けることができた。自力で分けられることのうれしさが子どもの表情に表れる。@〜Cまでの各時間の振り返りは「場面」を必ず使ってノートに二行で書いた。めあてを自覚化する振り返りの手立てである。

 後半のグループ音読につなぐため毎時「全文速読」を繰り返す。もちろん、毎回時間短縮できるよう家庭学習での速読も家族に聞いてもらい続けた。母親にもっとゆっくり丁寧に読みなさいと言われた子どもは、私の口癖を家でも得意げに言ったらしい。「速くすらすら読めるようになったらゆっくりでも読める」。初回の範読は5分28秒。G時は3分57秒。日々の短縮に驚き、速読を楽しんだ。速読で全文通読を繰り返すと場面の変化にも意識がおよぶ。

 学習の後半は人物の様子を思いうかべて声や動きであらわす。
 動作化が大好きな二年生である。地の文を読むナレーターと人物をセリフ担当と役者担当に分ける。こうすることでセリフと役者で「どうあらわすか」声の表現と動きの表現に工夫の対話が始まる。ナレーターから人物の動きにつながる地の文で役者に「動いてほしい」と注文が入る。棒立ちの役者がグループでの叙述への着目によって動き出す。その動きに連動するようにセリフの読み方が変わっていく。グループ学習が思惑より時間がかかるのでたがいのよさを伝えあうことができずに残念であった。学習の振り返りに仲間への賞賛を書いたものが多くありもったいないことをしてしまった。ことばへのこだわりをたくましくしていく真剣な子どもの眼差しを求める指導を続けなければならない。
(湖南市立菩提寺北小)