ちょっと工夫のある物語を書く
蜂 屋 正 雄

○はじめに
 物語を読むことは好きな子どもが多い6年生である。しかし、ふだんは周りの反応が気になり、なかなか自分の本当の考えは表現しにくい様子がある。今回の物語づくりの学習では、作品に投影された書き手の価値観にふれることで、相互理解を深めることを意図していた。

○指導によせて
 今回は、物語教材と関連させて、書くことを設定した。物語を文章構成などの表現と捉え、書くことの活動に生かしたいという願いからである。6年という時期を考え、「書き出し」「登場人物」「あらすじ」「山場」「おしまい」「主題」といった物語の構成要素を意識し文章を書く力を育てたいという学習成果を期待しての展開である。
 関連させる教材として「海のいのち」(立松和平)を選んだ。そこで主人公の成長や人物関係、山場の構成、表現の仕方などを書くことに役立てようとの意図からである。

○実践の概要
 読むことと書くことを関連させる指導は次のように実践した。
@ 既習の物語教材を、物語の6つの構成要素を視点にして読む。子どもたちがこれまで読んだ物語を構成要素を視点にして考えた。
A 物語教材「海のいのち」を読解活動と並んで、表現の仕方という面で学習内容を確認し、自分の表現に役立つことがらを考えさせた。
B 自分がこの物語で書きたかったこと(主題)は何かということは常に考えるように指示・助言をしながら、構想を立てさせた。
C 物語を書き、書いたものを友だちと読み合い、6視点を活用して感想や質問を述べ合う。最後には清書して文集とする。

○成果と課題
◎ 物語を構成する要素を視点に、物語を自分なりに考えて書くことができた。
◎ 特に「山場」や表現の工夫を意識して書くことができた。
△教師が、主題をしっかりと意識して書かせようとしすぎたため、物語を書くことの難しさを改めて感じてしまった子もいた。

 今回の学習を通して、それぞれの作品に書いた友達の考えが現れていることに気づく子もいた。当初目論んでいた、子ども同士の相互理解もはかれたことをうれしく思っている。今後も、自分の思いを表現し、伝えられる学習展開を楽しんでいきたい。
(草津市立矢倉小)