声に出して読もう
海 東 貴 利

 Bさんは、おしゃべりが大好きで、休み時間になるといつも他愛ない話をして周りを楽しませてくれる。しかし、彼女は、文字や文章を声に出して読む活動が大変苦手で、自分の作文を読むときもすらすらと読めず、詰まってしまう。文章を読ませると、意味が通らないところで区切ってしまうこともある。そこで、学年の初めから次のような取組を行っている。

◇今日の一言
 毎朝、教室の黒板に「今日の一言」を教師が書いている。「今日の一言」とは、彼女が昨日学習で輝いていた姿や今日がんばってほしいことなどを書いた二文程度のメッセージである。時には、人生訓や格言など難しい言葉を書くこともある。朝の会のときに、この「今日の一言」を彼女と一緒に声に出して読んでいる。二回ほど練習しただけで、一人ですらすらと読めるようになる。この後、この一言の内容を話題に彼女と自由におしゃべりをする。この朝の時間がその日の声を出すウォーミングアップにもなっている。

◇今日の音読
 国語の時間は音読からはじめるようにしている。言葉のリズムや美しさに気づかせることもねらいに、「今日の詩」として毎週教師が選定した詩を声に出して読んでいる。家庭学習でも取り組んでいる。週の初めの頃はすらすら読めないことが多い。しかし、くり返し声に出して読むうちに詰まらずに読めるようになってくる。最近は、彼女自身が「二回目の方が詰まらずに読めた」と自己評価することもあり、自信を付けてきたことが感じられる。

◇今日の読み聞かせ
 毎日、絵本の読み聞かせをしている。読み聞かせの後は、毎回、心に残った場面を尋ね、その場面の音読に挑戦させている。また、面白いせりふのある絵本を読んだときには、読んだ後でお気に入りの場面を彼女と一緒に役割読みをする。彼女がそのせりふの部分の読みを担当し、楽しく声を出す時間にもなっている。最近は、聞き手参加型の音読にも挑戦している。先日読んだ絵本『メチャクサ(ジョナサン・アレン作)』では、鼻をつまみながら音読してみたり、(マスクを着けたまま話すという場面で)口をふさぎながら音読してみたりと笑い声の出る読み聞かせの時間になった。ただ文字を目で追って読むだけに終わらない工夫を考えていきたいと思っている。

◇今日の出来事
 明日の予定や宿題を書く「連絡帳」に、「今日の出来事」として一日の振り返りを書く欄を設けている。ここには、その日あった心に残っている出来事や感想を三文程度で書くことにしている。自分がしたことやその日あったことと自分の思いや考えを区別して書けるように毎回時間をかけて取り組んでいる。そして、書き終えた後は、必ず自分が書いた「今日の出来事」を声に出して読ませている。
(高島市立マキノ南小)