お話の「いいなあ」をしょうかいしよう
岡 嶋 大 輔

 二年生の教室。子どもが本に触れる機会はたくさんある。毎週一回の朝読書の時間、月一時間程度の図書ボランティアの方や図書館司書の読み語り、週一時間、学級で図書室の利用もしている。
 国語科の学習は、そういった、子どもが本に触れる機会に広がりや深みを持たせるといった役割も持っている。そのような思いを持って「お手紙」(東書二上)を扱い授業づくりをした。
 単元の始めから子どもに提示したのは「いいなあ」という言葉。お話を読んで「いいなあ」と思ったところを友だちと紹介し合うというのがゴールである。「いいなあ」という言葉にしたのは、お話を読んでいて自身のプラスの感情が沸き起こった「登場人物の言動」がそこにあてはまると考えたから。「すき」よりも限定的である。

 単元の序盤、「お手紙」のお話で「いいなあ」と思った場面を出し合った。意外に多かったのは、かえるくんががまくんに手紙を書く場面であった。「意外に」というのは、私も「いいなあ」と思ってはいたが、まだ授業で人物の思いを考えていない段階では一番に選ばれない場面だろうと高を括ってしまっていたからである。
 続けて「どうしてそこが『いいなあ』と思ったの。」と聞いた。
「がまくんのために一生懸命手紙を書いているから。」「がまくんが悲しんでいるのを何とかしようとしているから。」といったように、かえるくんのがまくんに対する思いが語られた。その根拠として「大いそぎで」「とび出しました」という叙述やたたみかける叙述にも着目できた。

 そのようにして、自分や友だちの「いいなあ」に立ち止まりながらそこで読み取ったことや思ったことを出し合い、それを紹介カードにまとめていった。
 紹介カードは、
 o「いいなあ」と思った人物・場面の挿絵
 oその人物・場面のことを表す端的な言葉(「○○するがまくん」等)
 oその人物が思っていること
 oその人物・場面への自分の感想
の四つのパーツに分かれている。

 単元の終盤には、同シリーズの一話ごとにコピーしたものを回して読み、一つ「いいなあ」と思ったお話を選んで紹介カードを作った。読んで感じた人物の優しさや友だちを思う気持ちがたくさん交流されほほえましく感じられた。
 単元が終わり、お家の方から次のようなお手紙をいただいた。「『そりすべり』のカードを大事そうに持って帰ってきました。かえる君の優しさを一生懸命説明してくれました。素敵な本ですね。」
 「いいなあ」という言葉で、物語の作者、子ども同士、そしてその周囲の大人がつながったと思わせてくれる学習であった。
(野洲市立野洲小)