「新しい国語の授業」研究会
「新しい国語の授業」研究会を「新しい国語実践」の研究会につなぐ
森  邦 博

 8月2日(日)の「新しい国語の授業」研究会は、三井寺山門前の「風月」を会場に開催された。
 提案(「POPカードで推薦しよう・箕浦さんの実践)の研究協議、模擬授業(「俳句を作ろう」好光さんの指導)に続き、記念講演(俳人、宇多喜代子先生)と講話(吉永幸司先生)。研究会終了後は、講師を囲んでの実践交流会で語り合い、嘱目「夏やさい」でのミニ句会も行った。盛りだくさんで充実した一日だった。参加された皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。

 さて、今回の研究会で、私は箕浦実践で紹介された、Y児のノートの変化が心に残っている。
 授業中の活動内容が十分理解できないでいる時間の彼のノートの文字はマス目を無視した書き殴り。最後まで書き切れないまま…内容の判読が難しいほど乱れている。それを見た担任は、個別に説明する時間を持ったと言う。すると、社会のテストが終了したのちの隙間時間を使って自力で活動したそうだ。今度のノートの文字は、マス目に収まって書けている。読んでいて、彼の心の中が、ノートの文字に表れていくから不思議だと思った。今自分は何をするかを分かった時、そして自分なりに考えを持つことができたとき、Y児のノートの1文字1文字が丁寧になっていくのだから。

 他律的にやらされる学習活動から、どうやればいいのか、自から発する活動へ、また、こうやるべきだ自ら判断して行うことに変わったとき、学び手の主体性の芽生えが始まるということでもあるのだろう。箕浦先生のY児に対する個別的な指導・助言が有効に働いている。
 ノートに書いた内容を清書して「POPカード」に書き表すという次の学習時間には、平仮名を正しい漢字表記に直す推敲活動をした後に取りかかっている。このこのことも、ノートを見れば読み取れた。Y児は読み手を意識し、正しい表記で読みやすく伝えようとしていることがうかがえた。
 Y児の姿を報告してくださった記録を読むことで、箕浦さんは、『「POPカード」で推薦しよう』という言語活動を通じて主体的な学び手を育てようとしているのだと思った。実践のヒントは、Y児の抱えていた学習のやりにくい思い、つまりは、学びの実態に即し、個別的な言葉かけ、つまりは、個に応じた指導の工夫に留意したことにあるのだと思う。

 12月開催の「新しい国語実践」の研究会滋賀大会のテーマは「主体的な言語活動を通じて学び合う国語教室の創造」である。全国の実践者と、学び育ち合う国語授業・国語教室を語り合い、学びたい。
(京都女子大学非常勤講師)