Aさんが成長できるように
海 東 貴 利

 今年度は特別支援学級を担任している。担任しているAさんは、話すことがとても好き。授業中の発表は少し戸惑ってしまうこともあるが、日常生活の会話は十分できる。とても気さくで、人懐っこい性格が話しぶりにも表れるほど。Aさんと話す時は、こちらも楽しい気分になる。しかし、学級の人数が少ないのもあって、学校で話す相手は担任など限られている。打ち解けて話せるのはいいが、たまに羽目を外してしまうこともある。休み時間に一緒に楽しく遊んでいると、つい乱暴な口調になり、注意を受けることも。また、下級生とのかかわりも多くはないため、上級生らしい接し方や言葉遣いなどをさまざまな活動の中で学ばせなくてはならないと感じている。

◎いつもおだやかに話せるように
 そこで、4月からは人と話す機会を大事にする取組を続けている。これまでもいろいろな人と話す取組はしてきたが、その時間を少しでも有意義なものにするために、意図的に、目的的に取組をしようと思っている。
 たとえば、「カレンダー配り」という活動がある。日付を書いたり、カレンダーの絵を工作で仕上げたりして、校内に掲示する活動だ。各教室にも掲示してもらうために、教室へお願いに行く取組である。1年生から6年生の教室、職員室や保健室など、それぞれの場所で発表する機会がある。事前に、その場にふさわしい言葉遣いや節度で話せるように練習している。時々、相手から突飛な質問や感想が聞け、その受け答えがうまくできるかどうかをAさんのそばで見ているのも実は楽しい。終わった後で、「あの話し方でばっちりよかったよ。」「こういうふうに答えるといいんだよ。」とよかったところやアドバイスをして、次の場所へと向かう。回数を重ねるたびに、話し方も流暢になってくる。
 先日は、学区内の民生委員の方にも協力いただいて、カレンダーを配りにお宅へ訪問することもした。
「また、来月もお届けに来ます。よろしくお願いします。」
 これは練習してなかった言葉。いつ、そんな言葉を覚えて話せるようになったのかと驚かされた。次回は、どんなレベルアップをして驚かされるのか楽しみである。

◎読み聞かせから想像する力を
 相手の気持ちを考えて話すのは本当に難しい。乱暴な話し方をしたときに、相手がどんな思いをしているのかを想像するのは、実に難しい。学校で関わる友だちや大人が少ないクラスでは、実際の体験から学ぶことも限られてしまう。そこで、想像する力を少しでも豊かにすることも目的に、毎日、絵本の読み聞かせを続けている。物語の他にも、写真集のような文字のない本も読んだりしながら、想像の世界を広げている。読み終えた後、Aさんのほうから「ここがよかった」という感想が自然に出てきた時は、うれしい。
 先日、よかった場面を示した後で「じゃ、ここ声に出して読んでみる?」というと、何度も楽しそうに読むことができた。毎日、読み聞かせした本を記録する際は、Aさんの反応も記入している。声に出して読めた日の記録は、花丸が二つ。お気に入りの本をAさんがいつか読み聞かせしてくれるといいなとも思っている。これからも、さまざまなジャンルの本にたくさん出合わせながら、Aさんの想像する力を育てていきたい。
(高島市立マキノ南小)