巻頭言
拠点校指導員として学んだこと
高 野 靖 人
 3月に小学校を定年退職した。勤続35年。病気で欠席したことが1日もないのが、密かな自慢である。
 教師になって3年目から創立メンバーとして参加している「さざなみ国語教室」は、34年目を迎え、毎月発行の機関誌は、今回記念の400号となった。月に1度の定例会にも創立以来、ただ1人皆出席を続けている。これも密かな自慢である。

 勤続35年の内、担任を17年、教務主任を11年。残り7年は、初任者研修の拠点校指導員を務めた。
 拠点校指導員について簡単に説明する。担当するのは、四校四名の初任者。初任者が校内研修として実施しなければならない年間300時間の内、210時間(30日)を拠点校指導員が担当する。曜日を決め、1日7時間の研修(授業研修、一般研修)を行う。もちろん毎時間、初任者が感想を書くスペースも含んだ研修資料を用意しておく。4校4名の初任者にほぼ同じような研修を行い、1年を通して一人前の教師へ育てるのが基本であるが、講師経験、性格、学年、学校行事等に合わせ、校内指導員とも相談しながら、研修内容を調整して実施した。

 何しろ毎日勤務先が変わり、勤務した日は1日その学校の正規の教員として過ごすことなど、特に初年度は戸惑うことが多かった。経験を重ねるにつれ、見通しも持てるようになり、事務処理や研修計画等も各校の校内指導員をリードできるようになった。そして、拠点校指導員としての喜びも感じられるようになった。
 それは、4人の若い教師がそれぞれの学級の子どもたちと共に、1年間成長していく姿を見ることができる喜びである。もちろん、指導員としていくらか寄与できた喜びもある。
 1週間ごとの出会いなので、定点観測のように初任者や子どもの変化を捉えやすい。担任の気づいていない子どもの変化に気づくこともある。別室研修のスタートは、子どもの話であり、担任の悩み相談である。
 子どもたちと過ごせるのは、2,3時間の授業と朝の会、帰りの会、給食程度。子どもからのニーズがあれば、昼休みなども過ごす。その中で、担任の知らない子どもの本音などを聞き取った。短い時間に仲良くなれるように用いた、「簡単な手品」のレパートリーも多くなった。名簿や座席表も活用し、四学級の児童全員の顔と名前をできるだけ早く覚えるようにした。
  拠点校指導員として接した7年間、28人の初任者、そしてそれぞれの28学級は、私の記憶の中では宝物である。