私と本 (その2)〜並行読書〜
箕 浦 健 司

 「本は友達〜私と本から」(光村6年)。教科書には、星野道夫の「森へ」が教材として掲載されている。星野さんが出会ったアラスカの大自然が、写真と共に紹介されている紀行文である。この単元では、この「森へ」を読み、自分の気に入ったところを見つけ、それを紹介する文を書く。その後、これまでの読書生活で出会った、自分のお気に入りの1冊について、同じように紹介文を書き、交流することになっている。

 本校は、毎朝8時15分からの10分間に朝読書を行っている。じっくりと本の世界に浸り、落ちついて読める子も多いが、なかには、本を読むことが苦手な子も数名いる。アンケートでは、5月の1か月間に、家庭での読書量が0冊という子が数名いた。また、全員に「これまでのとっておきの1冊を紹介しよう」と投げかけたとき、学習活動がスムーズに展開できるかと考えた。これまでの読書量や読んだ本の内容等に大きな個人差があるなかで、スムーズな展開が困難になるのではと考えた。そこで、せっかく星野さんの「森へ」を読むのだから、この単元では「紀行文に親しむ」ことを目標にしようと考え、単元計画を組み立てた。

 長浜市立図書館の団体貸し出しの制度を利用して、星野さんの著書を児童数分依頼した。足りなかった場合を考え、地元の図書館でも個人的に数冊借りた。結果、45冊の本を用意することができた。
 また、毎日の家庭学習の課題としていた音読を、この期間は読書に切り替えた。読書カードを作成して配布。記入内容は日付、図書名、簡単な一言感想である。学級通信で、取り組みの内容やねらいを保護者にも呼びかけ、見守り、励ましの言葉をかけて頂くよう依頼した。このようにして、約1か月間は、子どもたちが「星野道夫の世界」に浸れるようにした。こうすることで、単元終末に紹介する本がなくて困ったり、何を書けばよいか分からなかったりするといったことを防ぐことにもつながると考える。児童全員が同じ土俵で学習活動ができることが、意欲の向上や理解にもつながるであろう。

 アラスカの大自然。ヒグマをはじめとした動物たちや、海、山、森。星野さんが出会った現地の人々。これらが写真と共に、星野さんの視点で紹介されている。いわば随筆。魅力がいっぱいである。導入では、教師が写真を紹介しながら読み聞かせを行った。多くの児童が、興味深く聞いていた。 紀行文、随筆といったジャンルにじっくり浸ることは、多くが初めてのようだ。子どもたちにとって、ぜひ新たな読書の魅力を見つける機会としたい。
(長浜市立神照小)