▼スピーチやディベート等、発表に関わる学習活動が授業に多く取り入れられるようになった。あらかじめ発表が予定していると心構えが違う。友達の前で、素敵な自分が表現できることに魅力があるから。

▼芳夫君(仮名)は「勉強はきらい」と平気で言える子だったのに、学習の中頃に意見を発表するという役割が当たった。初めは、「何でぼくがするの」と拗ねていたが、応援するという言葉で発表を引き受けた。その発表は見事だった。

▼芳夫君の発表について友達の感想を求める時間になった。最初の子が発表のよさをほめた。芳夫君は、にこにこして聞いていた。次の子は、内容のよいところを伝えた。芳夫君は、笑顔で「ありがとう」と言った。三人目の子には、「ありがとういございます」と丁寧な言葉になっていた。そして、四人目。この子も、発表内容のすばらしさを伝えた。芳夫君は「ありがとうございます」と言ってお礼をした。

▼笑顔からお礼まで。数分の出来事だった。数分でいい子になる姿を目の当たりに見た。

▼芳夫君の育ちの背景には、発表の場で自信が持てるように、練習させたり教えたりした先生のきめ細かな指導があった。これに感動。さらに、芳夫君は自分の力で発表したと思い込んでいた。そう思わせた先生の配慮にも感動した。(吉永幸司)