おはなしさくぶん
弓 削 裕 之

 1年生は春の遠足で将軍塚へ行った。大人でも息が切れるほど険しい山道を、2年生と手をつないで登った。ほとんどの時間を歩くことに費やした遠足だった。
 翌日、一人ひとりに遠足に行った感想を尋ねた。「昨日は遠足でしたね」と声をかけるだけで、うれしかったことや楽しかったこと、印象に残っていることなどを話し始める子がいた。できるだけ、こちらから「うれしかったこと」「楽しかったこと」という言葉を出さないように話をした。「昨日の遠足はどうでしたか」から始めて、少しずつ心に残っていることを言葉にさせた。
 子どもたちが話した内容は全て聞き書きし、「おはなしさくぶん」と題して全員分の感想を学級通信で紹介した。

・やまにのぼるときにあしがすべったけれど、2ねんせいのひとにたすけてもらったことがとってもうれしかったです。
・ペアのひとが、おはかのところでなんかいもてをあわせていて、かしこいとおもいました。
・さいしょやまのてっぺんでわたしがこけそうになったとき、ペアのひとがたすけてくれて、こんどは2ねんせいのひとがこけそうになったとき、わたしがたすけて、たすけあいをしてのぼってきました。
・やまにのぼったときにこけてしまったけれど、ペアのひとが「だいじょうぶ」といってくれてうれしかったです。
・やまのとちゅうでみずたまりがあって、くつがよごれてしまったけれど、てっぺんまであるけたのがうれしかったです。
・やまにのぼるとちゅうでおなかがすいたけれど、てっぺんにつくまではがまんができました。
・やまのはんぶんくらいでちょっとつかれたけれど、みんなもがんばってるんだなあとおもってがんばりました。
・やまにのぼるときに、したにはっぱがいっぱいおちていてたのしいきもちになりました。
・おやまのてっぺんについてけしきをみたときに、ほかのおやまがみえてきれいでした。
・おてらのうえにいったときにけしきがきれいで、がっこうがみえました。
・やまのてっぺんにのぼったとき、けしきがきれいだったから、おどろきました。
・てんぼうだいにのぼってけしきをみたときが、いちばんたのしかったです。
・やまのてっぺんでけしきをみたとき、きれいだなあ、ここまでのぼってきたんだなあとおもいました。
・やまにのぼってごはんをたべるところについたら、はちがむかえにきてくれました。
・てっぺんについたとき、おべんとうをたべてから、おかしをたべたことがうれしかったです。
・てんきがはれたのがうれしかったです。

 聞き書きをしていると、同じような内容であっても、子どもたちの選ぶ言葉が違うことに気づく。言葉の違いが、気持ちの違いなのだと、改めて感じた。
(京都女子大附属小)