【倉沢栄吉先生追悼】
教師の多面性・総合的資質
森  邦 博
 さざなみ例会で確か、西村さんが実践提案の当番の月であった。倉澤先生から直接ご指導いただけたのだった。その場で西村さんの提案を分析しつつ教師=教育実践者のあり方についてご指導いただいた。このことを契機に教師の多面性・総合的な教師力について考えるようになった。その時のメモから…。

1 教師はプランナーである
 教育課程を編成・管理し単元の指導過程を計画・実行する力が求められる。
2 教師はコンダクターである
 子ども一人ひとりのよさを引き出し、子ども相互の心地よい関わり=ハーモニーを奏でる力量が求められる。
3 教師はプロデューサーである
 学校・地域の環境に働きかけ、協働的関わりを企画・運営・進行する。「物的環境」とともに「人的環境」を整える力量が求められる。
4 教師はプロンプターである
 劇場の幕の影に控える黒子。個々の子どもへの支援者としての力量が求められる。
5 教師は「共育」者である
 「教えるは学ぶの始め」という言葉もある。「狂育者」「脅育者」「叫育者」「狭育者」「強育者」では未熟である。
6 教師はコンサルタントである
 子どもへのよき助言者・相談相手・補助者で有ることが求められる。
7 教師はオルガナイザーである
 学級という集団を組織して、学習を成立させる力量が求められる。
8 教師はコーチである
 学習の実態を把握し、個人指導、個人目標、練習計画を立案し実践していく力量が求められる。
9 教師は「仏様の指」を持つ
 このことについては、大村はま著「教えるということ(共文社)」にも述べられている。雨でぬかるんだ坂道を思い荷車を引いている男がいる。力を振り絞り、あと少しで抜き出せるという時、男の背中を仏様の指が…。抜け出せた荷車を引いて男は坂を登り切った。
10 教師は教授者である
 明らかな教え手としての姿である。教えなければならないときに遠慮することはない。
11 教師は師範者・示範者である
 決して市販者、子煩者ではならない。
12 教師は観察者・発見者である。
 「キッズ・ウォッチ」の力量が求められる。分析的・客観的評価とともに、主観的評価の力量が求められる。評価で大事なことは、厳密性のみでなく、子どもも教師も共に納得できる評価によって、次に学習・指導に生かせることである。
(京都女子大学非常勤講師)