理科で求められる言語活動
西 村 嘉 人

 さざなみ国語教師の紙面では、繰り返し、子どもの言語環境が変わる言語活動や言語力がつく学習活動が紹介されてきた。また、琵琶湖博物館でできる言語活動なども紹介してきた。今回は理科の学習場面での言語活動について述べてみたい。

 理科学習のパターンとしては、課題を見つけ、仮説を立て、確かめる方法(実験方法)を決め、予想を立てて、実験を行い、結果を記録し、考察し、分かったことと分からなかったこと・新たな疑問について考え、次の課題を見つける。という流れになる。

 この中で、まず立ち止まって考えさせたいことは「予想を立てる」という部分ではないだろうか。「この実験をすると△△のような結果になると思います。その理由は今まで経験した○○ということから連想してそう思うからです。」という、この一文を書けるように指導するのが理科の学習だと考えている。
 例えば、「磁石にクギをつけてもクギは磁石にならないと思います。それは、クギの箱の中でクギ同士はくっついていなかったからです。」理科として合っているか、合っていないかは別として、このように自分が今まで持っている経験から予想し、理由を書くことがこの課題の中での自分の考えを位置づける。この作業があると、実験結果が予想と合っていても、間違っていても自分の経験と実験結果がつながる。逆に予想を書いていないと子どもの中で実験結果が単独に存在することになり、「当てもの」になってしまい、「理科の実験は実験の中だけのものだ」と言われてしまうことにもつながる。まずは「予想」を立てる経験を重ねることが大切だと考えます。

 今年度の公立高校の入試問題はこの辺りの経験の有無を突いた問題が多く出されていた。例えば、土壌生物(分解者として)の問題として、次のような問題が出題された。

【問題】 考察1の[X]に入る適切な小動物の種類は何ですか。図4から、小動物の種類を1つ書きなさい。また、そう考えた理由を書きなさい。
【解答】 クモ。理由:外骨格を持ち、脚が4対で節があり、羽がないなど最も多くの共通点があるから。

 このような記述問題が4つの大問中2つずつ出題されていた。時間はかかるが、毎時間の「予想」を立てる時間を確保しないとなかなか難しい問題であると共に、実際の生活場面で論理的に考えを伝えるにはこの程度の力は必要である、とも感じた高校入試の問題であった。
(琵琶湖博物館)