「詩を楽しもう」の指導 「はしる しるしる」
吉 永 幸 司

1 「詩を楽しもう」を考える
 「詩を楽しむ」を、少し広げて「詩を○○楽しむ」と考え、○○を置き換えると、いろいろな言葉 が思い浮かぶ。例えば、「声に出して読むことを」「様子を想像しながら読むことを」「作りかえる ことを」「集めることを」等々。
 一般的には、詩の内容を詳しく考えながら、様子を思い浮かべて読むということである。

2 「はしる しるしる」の指導
 内容の理解という面から読むと、「いいきぶん」が繰り返されている。何が「いいきぶん」なのかと考えて読み返すと、1連目は、体は前へ進むのに、景色は後ろへ下がるという不思議さである。よほど速く走っているのだろう。
 2連目は、楽しさである。風がほっぺをくすぐることを感じるには、体が熱くなっていることが条 件になる。走る姿が想像できる。
 3連目になると、息切れするほど苦しいのに、「いいきぶん」と表現しているのは、それだけ、走 るのが楽しいということになる。
 気持ちは理解できるけれど、分からないという子には、詳しく、走っている時の様子を想像させる と、詩を好きになる契機になるような快さがある。

3 音読で快さを感じる
 「はしる しるしる」と「は」はどこかへ飛んでいってしまったような速さである。3年生の子ど もにとっては音読が詩の世界を広げる。音読も、1人で読む、2人で読む、全員で読む、代わり合っ て読む、行ごとに読む、さらに、連を単位にして読むことなど、今までの音読の経験を生かして、繰 り返し読むうちに、不思議なリズムが生まれる。
 はしる(3文字)、しるしる(4文字)、いいきぶん(5文字)と、形が整っていることに気づく。音読をすることに満足し、詩の工夫に気持ちが動く。
 発問は「工夫をした表現を見つけよう」としたい。しかし、一言、「音読をして気がついた表現の工夫をみつけよう」というのが学習意欲を高める。「工夫」の軸は動かないが、学習活動で得たものを改めて見直すことにつながるからである。言い方は微妙である。その微妙さが授業のワザである。