第19回「新しい国語実践」の研究会新潟大会 分科会報告
箕 浦 健 司

 昨年12月26・27日に開催された標記大会に参加した。1日目の分科会では、B「書くこと」の司会を務めた。3つの実践提案があった。

 まず、千葉県我孫子市立我孫子第一小学校6年生の実践。「相手意識と目的意識を持たせる書くことの学習指導のあり方〜“ふるさと案内パンフレット”作りを通して〜」。
 『一人ひとりを生かした学級経営のあり方』という校内研究主題に合わせ、リレーションの確立を目指した「学び合い」、よりよい交流のあり方を目指した実践であった。
 1学期は、運動会のリーフレット作りに取り組まれた。紹介する相手は家族。小学校生活最後の運動会に対する意気込み、見所などをお世話になった家族に伝えたいという、相手意識、目的意識を意識した実践であった。互いに作成したものを見合い、よさを褒めたり、助言したりする「学び合い」を設定された。
 そして、この学びをステップに、2学期には「観光客に『ふるさと案内パンフレット』を読んでもらおう」というテーマで実践された。総合的な学習の時間とも絡めて、市の子ども議会で趣旨を提案して市長の理解を得、作成したパンフレットを市の観光案内所に置いてもらうこととなったそうだ。子どもたちの意欲が十分に高まったと想像できる。また、1学期の反省を踏まえ、より「学び合い」を深めるため、4人一組で取り組ませ、編集会議を繰り返された。1学期には、よさを褒め合うにとどまり、助言にまで至る子どもは少なかったそうだが、このときは、「自分たちのパンフレットをよりよいものに」という意識から、文章の書きぶりやレイアウト等に互いに助言し合う姿が見られたそうだ。

 続いて、新潟県長岡市立脇野町小学校5年生の実践。「アクティブ・ラーンニング」を念頭に置き、総合的な学習の時間に行う保育園や老人ホーム、お茶の間会の方々との交流に向けて、「必要な情報が伝わり、相手の心をキャッチするチラシ作成」に取り組まれた。表記する必要な情報の取捨選択、相手の心に伝わるキャッチコピーの熟慮が学習活動の中心であった。
 常日頃から、係活動のポスターや席替えの度に実施されている「隣の友達紹介」等で積み上げられたキャッチコピー作り。タブレットなどICT機器も活用された。1人1台端末があり、どの子も機器を自在に操れるようになったそうである。当然画像も挿入されるわけであり、どのような画像が効果的か、そしてその画像を生かす言葉は何かという思考も必要となる。こちらも相手・目的意識が重視され、また言葉一つに立ち止まり、思考する場が保障された実践であると感じた。

 最後は、青森県弘前大学教育学部付属中学校2年生の実践。「文学的文章を書くファーストステップ」ということで、エッセイ作りに取り組まれた。
 子どもたちが書く文章がどうしても説明文的であり、そこからの脱却を目指された実践である。教材は、「私の好きな春の言葉」(教育出版1年)。「花曇り」「菜種梅雨」「花筏」「春告草」等、季節を表す言葉とその意味を知ることで、今まで特に何も感じなかった風景に感動することができる。教材の魅力を研究され、子どもたちにそれをどう伝えるかを十分に熟慮されての実践であった。持参された生徒作成のエッセイは、言葉との出会いで広がった季節感を存分に楽しんでいる様子が伝わってくるものであった。

 研究会では、子どもたちが書いたものそのものへの評価のあり方等について、出席された先生方の熱心な議論がなされた。助言者の先生方からは、書いたことに満足させず、ふり返り、自己評価が必要であるというご助言もいただいた。
 3つの実践や出席された先生方のご意見、ご助言等から多くを学ぶことができた。3名の先生方の実践提案から伝わってきたことは、とにかく「子どもが好き」「国語が好き」ということ。そのことをうれしく思うと同時に、さらなる研鑽を積む決意を新たにした大会であった。
(長浜市立神照小)