滋賀県の環境学習と言語活動 (1)
蜂 屋 正 雄

 環境学習というと、「地球温暖化」「酸性雨」「オゾン層の破壊」「水質の汚染」など、環境問題として学習が進められることが多い。ただ、他府県で多く進められているこれら環境問題についての学習は、実体験や生活実感を伴わなず、「自然を守るために○○してほしいと思います」という、切実感のない感想で終わることが多い。これらの知識理解で終わる環境問題の学習は(私も何度も経験があるが)一時の興味を喚起したり、知識を得たことによる満足感はある。しかし、自分自身の生活を振り返り、自然観を変えるほどのインパクトはなかった。実際、環境問題は子ども一人ひとりではどう抗いようもない問題なのである。

 これに比べて、滋賀県の環境学習は環境問題ではなく、自然愛護に力点が置かれてきた。地域の自然を愛し、大切にしたいという気持ちを育てるということである。最近教育課題として出てきたESD教育の基礎になる教育実践が積み重ねられてきたと言える。
 個人的には、学区の地域学習を深めていくのが一番良い環境学習になると考えている。理由は、以下の二点からである。
 一つ目は、滋賀県では、大津や草津、彦根の街中であっても、多様性に富んだ生きものの営みを見ることができるからである。川の上流から下流、池、田んぼなどの様々な水辺がある。そこでは、草花、昆虫、水鳥、動物、土壌生物、プランクトンの食う・食われるの関係を見ることができる。また、県内であればどこからでも緑の山々を見ることができる。これは、街中からさほど遠くないところに自然環境が存在することを意味する。そのおかげで、街中であっても、ある程度の生きものがやって来て、私たちは自然の営みに触れることができる。つまり、滋賀県内である限り、どの地域でも環境学習はできる。
 二つ目は、地域の方の思いに触れられるからである。地域の自然を調べていく中では、地域の方の力を借りることも必要となる。いろいろなご協力をいただく中で、それぞれの大人の持つ地域への思いにも触れることがある。環境学習が、自然に対してだけでなく、社会・人間環境に対して考える機会にもなるからである。

 このようにして進められた環境学習において、子どもには、学区の自然や社会について「いいな(いやだな)」「知っているよ」「やったことがあるよ」という何かが残っていく。子どもたちの心の中に自分の住む地に対して「好きだな」という感情が芽生える。そういう学習にするのが環境教育だと捉えている。
(滋賀県立琵琶湖博物館)