自分なりに読み取ったことを朗読で表現しよう「大造じいさんとガン」(光村5年)
箕 浦 健 司

 4月から、家庭学習として毎日音読を課している。めあては、
 ・正しく読むこと
 ・声を出すこと
 ・様子が表れるように読むこと
である。子どもたちは、本単元で初めて「朗読」という表現方法に出会う。音読から一歩進んで、自分の読みが周りの人に伝わるように声に出す。単元の冒頭で、子どもたちに「朗読」「情景描写」の2点について説明し、学習活動を開始した。子どもたちは大造じいさんとガンの頭領・残雪との関わり合いに魅力を感じたらしく、意欲的に取り組むことができた。

 朗読に自分の「読み」を表すためには、内容を読み取らなければならない。読み取り・内容理解と朗読を両立させるため、今回は、
 ・各場面毎の読み取り
 ・前時に読み取った各場面の朗読
という流れで、これを各場面毎に四回、繰り返した。読み取りで重視するポイントは、@大造じいさんの心情、A残雪の行動・様子、B情景描写、である。教科書に線を引き、各自が線を引いた場所を全体で確認、情景描写には大造じいさんのどんな気持ちがこめられているかを交流し合った。そして次時に、教科書本文をコピーした用紙を配布。各自が朗読記号を書き込み、練習した後、3〜4人のグループで発表をし合った。教師の模範や、得意な児童の発表を聞かせ、目指す方向を明らかにしてから取り組んだ。以下は、発表後の子どもたちの感想。

「Hさんは、大造じいさんのセリフを十分に間を取って読んでいました。間を開けるというのは、これぐらいしなければいけないのだなと思いました。参考にしたいです。」
「今日は3の場面の朗読発表でした。物語のクライマックスの場面なので、工夫して読んだつもりです。友だちも、みんな工夫して読んでいました。」

 発表は、1〜3の場面は小グループで、最後の4の場面は全体で行った。

 今回の実践をまとめ、さざなみ国語教室の11月例会で提案した。以下のような指導を同人からいただいた。
○朗読する場面を限定して、どう読むかを全体で考え、高めていけるような場面が必要だったのではないか。1つの場面を徹底的にこだわって学習し、自分のものにできたら、あとは子どもたち自身が工夫することができるのではないか。
○1時間の授業でも、単元の流れの中でも、子どもたちが「賢くなった」「よくなった」「高まった」と実感できる展開が必要である。同じことの繰り返しでは、ただ先生に「やりなさい」と言われたことをやっているだけ。その部分が物足りない。
○自分の読みを表現するのだから、注目してほしいところを聞き手に告げてから朗読し、聞き手が評価するという場が必要ではないか。
○日常の音読も、めあてはまず「正しく読む」だけでよい。苦手な子に最初から多くの観点を示すことは、音読嫌いの子を増やすことになる。
 何度も繰り返すことで力が定着するという思いだったが、子どもの高まりや自主性といった面からの工夫が不十分であったことを痛感した。日々の音読指導から根本的に見直す必要があることもわかった。やる気溢れる子どもたちに正しい方向を示す教師の役割を果たすべく、反省をこれからの実践に生かしたい。
(長浜市立神照小)