琵琶湖博物館と学校
蜂 屋 正 雄

 理科をはじめ、各教科で言語活動ということが言われ、様々な授業が提案されている。私自身、国語科以外の学習で、どれだけ国語科で培った言語力を活用できているかが子どもにとっての本当の実践の場だと考えており、この場でも、環境学習に際していくつかの提案をさせていただいた。

 一方で、言語活動に引きずられて本来のそれぞれの教科のめあてがないがしろにされていないか、という懸念もある。理科でいうと、感想交流や意見交流をするために、実験や観察の時間が十分に確保できていないということはないのだろうか、という懸念である。

 先日、滋賀県初任者研修が博物館で行われ、学校で博物館を利用する際にどのような活動が考えられるかという演習を見せていただいた。事前の研修で、「予想」「実験」「考察」という学習過程が大切だということ、事前事後学習をしっかりとするようにという指導があったのかもしれないが、どのグループも事前学習、事後学習ということを具体的に入れて学習計画を立てていた。

 ここで、博物館での学習をメインに考えたときの事前学習、というとどういうことになるのかを考えさせられた。例えば、地層や化石の展示を見る前に、昔のくらしの展示を見る前に、どのような事前学習が可能なのだろうかということである。

 今、一番良いと考えているのは、事前学習の結果、「博物館の展示ではどうなっているのだろう?」という疑問を持って来館してもらうことである。しかし、これはなかなかハードルが高い。なぜなら、それまでに地層であれば地層のこと、昔のくらしであれば、地域の昔のくらしについて事前に学習して、自分なりの結論なり考えを持って来館してもらわなければいけないからである。発展学習としての博物館利用ということになる。具体的には、「稲枝でのくらしとはどこが同じでどこが違うのだろうか。」「うちのおじいちゃんはこんな生活をしていたそうだが、展示ではどうなっているだろうか。」ということになるだろう。そうして、比較した結果、自分たちの地域のくらしはこんな特徴がある。こんな工夫がある、ということを再確認して新聞などにまとめるという学習が考えられる。

 では、次善の策はというと、少し残念ではあるが、博物館で事前学習をしてもらうということである。実際にはこういった利用の方が圧倒的に多い。博物館にあった地層や昔のくらしはこうであったが、これから学習する地層や昔のくらしはいったいどうなのであろうか、ということを予想し、疑問として持ってもらうことである。なぜ、「残念」なのかといえば、このパターンでの学習には、事前に先生方に展示物の特徴を知っていただかないまま終わると(稲枝のくらしを展示していることや多賀のゾウを紹介していることなど)、予想や疑問を持たないままに学習が進むことが多いと考えるからである。しかし、そのあたりを解消するのが博物館教員の仕事なのだろうな、とも考える。

 どちらにせよ、疑問や予想を持って学習に取り組み、その都度、現時点での自分の考えを書き残していくことが言語力強化の要であり、書きたくなるような授業展開こそが教師の腕の見せ所なのではないかと、再発見させてもらった初任者研修であった。
(琵琶湖博物館)