秋田プライド
廣 瀬 久 忠

 全国公立学校教頭会研究大会が秋田市で開催された。初日のシンポジュームでのこと。
 シンポジストは杉田洋視学官、根岸均前県教育長、濱田純前教育次長、コーディネーターは勝野正章東大大学院教授。

 勝野氏は、OECDのキーコンピテンシー、@自律的に行動する能力、A社会的な異質の集団における交流能力、B社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力を例に秋田教育について 語った。

 杉田氏は日本の教師のローコストハイパフォーマンスぶりを讃えつつも学校が進む方向のベクトルを一にしているか問うた。しっかりとしたリーダーシップと合意形成は折り合いと歩み寄りにより成せる。同じ船の乗組員がさまざまな方向にオールを120%の力で漕いでも前へは進まないと指摘。

 根岸氏は、社会を生き抜くキャリア教育を熱弁した。173%の食糧自給率を誇る秋田は全国2位。なのに農産品額は全国13位。あきたこまちが新潟のせんべい業者に引き取られていく悔しさ。秋田には仕事がない。だから教育が必要な県民性がある。一昔前の日本がそうだった。学べば幸せになれる時代があった。現在でもである。

 濱田氏の発言が圧巻であった。
「皆さんは、なぜ秋田が学力1位なのか。三世代家庭で育ち、早寝早起き朝ご飯。あいさつを欠かさない。学校家庭地域が強く連携し、僻地の少人数指導が成績を上げているとお考えでしょう」「昭和31年の学力テストで貧しい秋田は最下位」「それから模索がはじまりました」「学校の教師も苦心しました。そこに行政も一体となる取組みをこの50年積み上げてきたのです」「すなわち学校家庭地域の正三角形にもう一つ、行政を加えた正四面体を作ったのです。この四面体は実に強い。昭和37年から始まった『ふるさと教育』の連綿とした取り組みの成果なのです」「B問題の成績が高いのは、総合をがんばり、授業の効率化を図り、単年度ではなく年度をつなぐ子どもの評価の伝達の取組みがなされ、自主的学習を追究し教育の正常化を求め続けてきたのです。」
 さらに、「秋田には、仕事がありません。みんな都会へ出て行くのです。そのために『自分とみんなの関係をどう学んでいくのか』を重視してきました。就活で初めて社会と接したのでは遅いのではないですか。皆さんの県では、勉強ができなくてもそこそこ働ける状況があればなかなかそうもいかないのでしょうが」「もうひとつ、秋田の保護者、地域の方は、学校へ敬意を持って接してくださる。学校の教師は誇りを持って子ども の未来を預かっている」と。
 熱を帯びた語りに羨望と先を見据えた歩みに対する畏敬の念が沸き上がる。
(湖南市立菩提寺小)