ノ ー ト 指 導
弓 削 裕 之

 ある小学校の夏期研修会に招かれ、「ノート指導」の話をさせていただく機会に恵まれた。学年ごとのノート指導のポイントや、子どもへの意欲づけの工夫など、学校として取り組んでいることをお話した。

 具体的な指導内容はもちろん、特に伝えておきたいと思ったのは、全校でノート指導に取り組んだエネルギーがどのようにして生まれたのかということだ。京都女子大学附属小学校で「国語力は人間力」の取り組みが始まったのは8年前。その当時、私はまだ京女小に勤務していなかった。つまり、「国語で学校を変えよう」というエネルギーが生まれた現場にはいなかったのである。実際、京女小に来て初めて担任した3年生が丁寧にノートを書いている姿を目にした時、それが当たり前なのだろうと感じていた。
 新任の研究授業の際、私が黒板に書いた「皐月」の字を子どもたちがノートに写す場面があった。事後研究会で、先生方が「全校でやりましょう」と提案してくださった。新任教師の拙い実践の中から「よさ」を見出し、それを全校の取り組みにする。ありがたいと思うと同時に、京女小のエネルギーを感じた。

 今回「ノート指導」についてお話させていただくにあたって、私は初心にかえり、改めて「国語力は人間力」の歴史を振り返った。出発点は、「どんな学校にしたいですか」という吉永先生の問いかけに対し、教師一人ひとりが書いた116の提案。その中に、「音読集会」や「言語力検定」など、現在の京女小を支える取り組みのもとになる提案があった。指導の実態を交流し合うことで、多くの課題も見つかった。その一つが、ノート。「ノートを丁寧に書く」ことに対する教師の意識に差があったのだ。そこで、国語力の基盤をノートに位置づけ、授業の成果をノートで見てもらえるようなノート作りを目指した。まずは教師の意識改革から始め、ノートに書くことを前提とした板書づくりを研究した。子どもたちの書く意欲を高めたいと、全校で「附小ノート検定」を行った。教師のエネルギーは子どもたちに伝わり、京女小の子どもたちはみな、始業とともに自然とノートを開けるようになった。

 お話をさせていただいた後、研修会に参加していた先生方で、自分たちが日頃どのようなノート指導をしているか交流する時間があった。同じ学年でもノートの書き方が違うことに気づいたり、学年で統一できそうなところを発見したりする場面が見られた。子どもたちのノートを見せていただくと、どの先生も子どもたちの実態に応じた丁寧な指導をされていることがわかった。そして、自分がよいと思う「ノートのあり方」について熱く語っておられた。校長先生のご助言の中に「これまでは、先生方それぞれに力はあったけれど、向いている方向が違った。教師全員が同じ方向を向くことの大切さを感じた」という言葉があり、一つの学校が変わろうとする原石のようなものを見せていただいたことに大変感激した。
 夏休み明け、各クラスでノート指導に力を入れる先生方の姿と、その向こう側の「何か新しいことが始まる」ことにわくわくしている子どもたちの顔が想像できた。
(京都女子大学附属小)