本棚  つながる図書館
猪谷千香 著
ちくま新書 2014.1 780円
つながる図書館

 都道府県や市町村が設置する公共図書館は約3200館。しかし、行ったことのあるのは、居住地と勤務地の図書館、せいぜい県立図書館くらい。博物館や美術館へは旅先で立ち寄ることがあっても図書館へ行くことはない。それは、図書館は本を借りるところで、どこも似たようなものと思っているからである。

 1970年代から館数も貸出冊数も増えたが、バブル崩壊後は予算が削減され、「無料貸本屋」という批判もされた。2000年代半ばからは「課題解決型図書館」が目指されるようになった。  本書に取り上げられているのは、新しいタイプの図書館、今、注目を集めている図書館である。キーワードは<コミュニティの核をめざす試み>。

 TSUTAYSを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者となった武雄市図書館。スターバックスがあり、本も売っている。マスコミでも大きく取り上げられた。市民だけでなく市外から利用者も増えたという。
 その隣町には、計画段階から市民が参画し、ボランティアとして運営にも協力している伊万里市民図書館がある。

 他にも「町民が主役の図書館」を目標に掲げる小布施町では、店舗や自宅の玄関に書棚を置く「まちじゅう図書館構想」が実現しつつある。今、図書館が熱い。
(常諾真教)