巻頭言
教 頭 通 信
西 岡 章 博

 「今週のコラム」誕生
 約千三百名の児童と八十名の教職員の新任教頭として赴任。どうすれば効率よく教職員へ情報を伝達・共有できるのか、重要な課題だった。前教頭(現校長)に習い「週予定表」を職員へ配布し、その中に「依頼事項」を追加し、約一年間続けたが、改善は難しかった。「まず教頭を知ってもらおう」と思い、「今週のコラム」を挿入し「教頭通信」と改名した。次第に先生達だけでなく、給食室や事務室からも好評の声が入ってくるようになった。
 コラムもまもなく百号に達する。その中で今年度の初めに綴ったのが次のコラムである。

 「涙」〜別れと出会いの季節〜
 この季節は転勤、異動、卒業また入社、入学等別れと出会いが重なりうれしい涙、別れの涙が交錯する季節。ウキィペディアによると「『涙』は涙腺から分泌される液体。ヒト特有の現象として感情の発現で涙を流すことがある。(後略) 
 今から約三十年前、生化学者のウィリアム・フレイ二世は、感情が高ぶった時に、人は何故涙を流すのか?その問いへの答えを探求した。フレイの実験では、様々な種類の感情とタンパク質の関係が明らかにされたわけではなく、感情と涙の関係は興味深いテーマとして存在し続けている。  三十数年前まで私の実家では但馬牛を飼育していた。母牛を飼育、年に一度子牛を出産させ、牛市で売り生計を立てていた。亡き母が「母牛は子牛が売られ、連れて行かれる朝、声を上げて涙を流して泣く」、と言っていたことを思い出す。もうその現象を確認することはできないが、感情が高ぶり、涙を流すことは母親の経験知によれば人間に限ってのことではないようである。
 感情の涙をヒトの独占物にはしたくないが、「純粋で希望のある涙」は見ていて気持ちがいい。それに近い涙を先日送別会で拝見させていただいた。

 涙という「言葉」
 これは送る側のある男性教諭が流した涙である。この教諭、涙腺が弱くなる歳でもない。聞いていて爽やかであり、感動を受けてしまった。その思いを伝えたくコラムに掲載した。
 毎号約六百字。毎週木曜締め切り。政治的事象は避け、旬な話題に自分の思いを込める。今週はどんな“言葉”で語りかけようか。
(兵庫県宝塚市立長尾小学校)