▼『猫の「こうばこ」すわり』という問題が宿題にでた。平仮名を漢字に書き換えるのである。毎日の漢字プリントは新出漢字に当てられている。その日は「箱」であった。「あきばこ・からばこ・ふでばこ」に並んで出てきたのが「こうばこ」であるので、箱の部分は予想できた。なじみがない漢字なので戸惑うのは当然。

▼宿題プリントの翌日。「おはようございます」に続く子ども同士の会話は「こうばこすわり」であった。「漢字はわかりましたか」「辞典で調べたがなかった」「大人の辞典で調べた」「お母さんは知らないといった」と等々。なかには、「こんな問題を小学生に解けるのかな」と言っていたという家庭の内輪話も平気でする。話題は多岐に広がるが、表情は明るい。

▼出題者の意図だったかどうかはわからないが、おそらく「こうばこすわり」は、子どもの心の奥に深く入り込んでいるだろうと思った。少し難しい、少し背伸びをすると解けるような課題について興味を示すのが子どもである。ちょっとした知的好奇心に刺激され快さを感じているのである。

▼学校の授業でも同じである。「今日の勉強は」から、家庭の会話が始まってほしい。そのためにはどうしたらいいのか等、思いが広がる。宿題の解き方から始まる朝の教室がいいなと思いながら子どもの会話に耳を傾けていた。(吉永幸司)