本棚  教師の資質
諸富祥彦 著
朝日新書 2013.8 780円
教師の資質

 著者は明治大学教授。学校心理士、スクールアドバイザーとして全国の学校を回り、「教師を支える会」の代表も務めている。一般的・理想論的な教師論ではなく、学校現場の問題や教師の悩みを熟知した上での教師論なので、共感しながら読むことができる。

 第2章では、教師を取り巻く苛酷な現状を取り上げる。うつ病は一般企業の2.5倍。こういう現状の中で求められるのは、「お互いに支え合う職員室」「弱音を吐ける職員室」づくりが重要だと説く。教師には「援助希求力=上手に助けを求める力」が必要である。

 第4章で述べられている「学級経営力」は2つ。「人を傷つけるようなことは、しない。言わない」「クラスの誰かの発言は、最後まできちんと聞く」というルールを定着させること。もう一つは、リレーション(教師と子どもの間、子どもと子どもの間に、ふれ合いのある関係)を作ること。

 第5章では、使命感(ミッション)と情熱(パッション)がなければ、教師になるべきではないと説かれる。

 最後に本書で論じられている教師の資質18項目が一覧表になっている。自分は何が得意で、何が足りないのかをチェックしてみるとこれからの教師生活の方向が見えてくるだろう。
(常諾真教)