▼新聞の投書。「何を書こうかと考えたのですが、ありがとうの言葉しか出て来ないですね。お母さんを生んでくれたばあちゃんにも感謝だなあと感じます」。これは大学生だった次男がお母さんに送った誕生日のメッセージである。それまでは、花を贈ってくれていたが、「学生の間は、葉書一枚で充分よ」と伝えると、代わりに心のこもった葉書が届くようになったとか。

▼書くことの大事さを感じるとともに、葉書で心を伝える文化を共有している親子関係に温かさを感じた。少し前、単身赴任のお父さんに、葉書通信を薦めたことがある。それまでは電話とメールを利用していた。が、葉書を始めてから、楽しみが増える、成長が分かる、書いた日の気分が伝わると満足そうに話されていた。

▼投書でもう一つ、心に残ったのは、葉書の「ありがとう」の言葉。身近な人に感謝の気持ちを伝えるのは難しいのが日常。しかし。投書では「ありがとうのことばしか出てこない」と素直に書いている。言葉を探し、選びながらたどり着いたことが推測できる思いやりの言葉。

▼少し落ち着きがなくなった教室。「ありがとう」を使えることを見つけることを始めた。当たり前に見えることがそうでないことに気づくことが多く、気がついた時は、落ち着いた教室になっていたという話を聞いたことがある。(吉永幸司)