名脇役は誰
弓 削 裕 之

 2学期末に、5年生で冬の俳句作りをした。五・七・五のリズムにすること、季語を必ず一つ入れることを確認した後、次のような問いかけをした。
「季語を主役にしますか、脇役にしますか。」
 一番伝えたいことが季語の部分かそれ以外の部分かという意味である。今までに作ってきた俳句を振り返らせると、季語を主役にしている児童のほうが多かった。

 そこで、「逆上がり 成功したよ うれしいな」を例にし、「うれしいな」の部分を季語に代える活動をした。子どもたちから出た「冬の朝」「雪の中」などの季語を入れて、季語を入れる前と後で感じ方がどう違うかを考えた。
「手がかじかんで痛いだろうな。」
「たくさん練習をしたんだろうな。」
「何度も失敗したんだろうな。」
 季語を入れる前よりも詠み手の背景が想像でき、成功した時の喜びがより伝わってくることに気づいた。「この場合、季語は(伝えたいこと=主役)を惹き立てる名脇役になっています」と付け加えた。

 その後、「冬から春へ」(光村5年)にある季節の言葉を参考に俳句作りをした。机間指導中、Aさんから「どうしても二つ季語が入ってしまう」という相談を受けた。見ると、「雪が降り 屋根は真っ白 雪化粧」と「雪」が二つ入っている。そこでAさんの句をみんなに紹介し、どうすれば季語を一つにできるか考えた。Aさんが伝えたいことは、「雪化粧」という季語の部分である。子どもたちから、「雪」という言葉を別の言葉に言い換えればいいという案が出た。
 「綿」「雲」「風」などの候補が挙がったが、「うさぎ」という意見にみんなが「かわいい!」と反応した。
「では、うさぎ降り、でどうでしょう。」
 子どもたちはまだOKを出さなかった。
「うさぎだから、うさぎ跳び、のほうがいいと思います。」
 伝えたいことがより伝わるように、言葉を吟味している。「同じ言葉が入ったり季語が重なったりした時には、比喩表現が役に立つのですね」と付け加え、この場合は「雪化粧」という季語を惹き立てるためにそれ以外の部分が名脇役になっていることを確認した。
 最終的にAさんは次のような俳句を作った。

  うさぎ跳ね 屋根は真っ白 雪化粧

 「うさぎ」という言葉がみんなから出た時、Aさんはうれしそうに何度も頷いていた。名脇役を見つけることが、俳句作りの喜びにつながると感じた。
(京都女子大学附属小)